悪事暴いても「裏切り者」内部告発の悲しい現実 「ゴキブリ」「ウジ虫」罵詈雑言を浴びせられた
――そうした現実があるにしても、公益にかなった内部告発は欠かせない、と。
社会人であれば、自らの組織で不正を目にしている人もいると思います。私は警察以外の組織をほとんど知りません。民間企業での経験は、天下りした生命保険会社だけです。社員は優秀で、警察に比べて職場の風通しもよかったと思います。仕事の進め方について上司に意見を具申している姿も、よく見ました。時折、社員による不祥事もあり、会社の幹部からの相談も受けました。
2020年6月に公益通報者保護法が改正され、通報者の保護が強化されました。法によると、通報先は、内部通報の窓口、監督官庁や警察、検察、報道機関ですが、それぞれ要件があります。
不正を目の当たりにした人は、それが社会的に非難を受けるような事案ならば、まずは、信頼できる上司がいれば相談してはどうでしょうか。真っ当な会社であれば、必要な改善が行われるでしょう。無視されたり、通報者への不利益な処分が行われたりする会社は、将来、経営がうまくいかなくなる可能性が大きいと思います。
まずは信用できる弁護士に相談してみる
2007年、北海道で牛肉ミンチ偽装事件が発覚したことがあります。それを内部告発したのは偽装した会社の常務。彼と後に話して知ったのですが、最初は監督官庁や警察に偽装肉のサンプルを持って通報したのに、相手にされなかった、と。報道機関もなかなか腰を上げなかったそうです。
つまり、不正を告発しようと思っても、個人には官庁や報道機関の姿勢を知ることが困難なわけです。監督官庁や報道機関に通報するなら、まず、信用できる弁護士に相談してはどうでしょうか。各地の弁護士会には相談窓口もあります。
――原田さんは在職中に裏金是正の声を上げることができず、勇気をふるって告発した後は誹謗中傷にもさらされました。その人生に悔いはなかったのでしょうか。
もちろん、悔いなしです。私の場合は、オンブズマン関係の弁護士の支援で2004年10月に「明るい警察を実現する全国ネットワーク」を結成し、その代表を務めました。それがきっかけになって、全国で警察改革を訴える機会を与えてもらいました。2007年2月には「市民の目フォーラム北海道」を立ち上げ、警察相手の国賠訴訟の支援や弁護士会などが主催する集会での講演、警察官の不祥事などの取材対応に当たってきました。
とくに印象深いのは、大学での講義です。「警察の実情や課題を話してほしい」と頼まれ、北海道大学など地元の大学、早稲田大学や慶應義塾大学、立教大学など首都圏の大学、関西圏や四国・九州の大学でも講義しました。
警察の抱える課題を警察法や警察官職務執行法なども交えて授業するケースは、過去にあまりなかったと思います。リアクション・ペーパーを使って学生からは「警察の課題など考えたこともなかった」「組織や構造の問題点を知ってびっくりした」という声が相次ぎました。
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