悪事暴いても「裏切り者」内部告発の悲しい現実 「ゴキブリ」「ウジ虫」罵詈雑言を浴びせられた
――内部告発には妨害や嫌がらせもあるし、そうとうな覚悟が必要なわけですね。
内部告発にもいろんな方法があります。まずは、組織内の通報窓口に連絡すること。これは、公益通報者保護法に規定された枠組みです。次に監督官庁への通報。警察や検察もこの範疇に入るでしょう。
最後が報道機関です。私が会見した2004年2月時点では公益通報者保護法は施行されていなかったので、組織の不正をただす環境は当時より整備されたとはいえるでしょう。
内部告発者の動機は一様ではありません。当然、「あいつだけは許せない」という私憤に突き動かされたケースもある。
ただし、本当に組織や社会の是正を願っての内部告発なら、通報先を慎重に考える必要があります。監督官庁や報道機関は本当に動いてくれるのか、組織内の通報窓口は正常に機能するのか。それをきっちり見極めないと、逆にしっぺ返しを食らう恐れもあります。
内部告発者を最後まで守るシステムはない
私の会見後、各地の警察で相次いで裏金が発覚しました。少なくとも12府県で警察官OBによる内部告発があり、1件だけ現職警察官(巡査部長)による告発もありました。告発の動機は本人だけが知っていることですが、それら内部告発者の多くは線香花火のように消えてしまいました。
報道機関の関心はすぐに薄れます。内部告発はいっとき、なのです。内部告発者を最後まで守ってくれるシステムはありません。告発後は生活保護で暮らした者もいると聞きました。内部告発者は、自らが自分を守る覚悟が必要だと思います。
私が告発した警察の裏金システムはどうなったのでしょうか。少なくとも、私の在職中のようなやり方はしていないでしょう。ただ、何らかの方法で続けている可能性はゼロではありません。
何よりも気になるのは、法の執行機関である警察の内部で「(治安維持のためなら)多少の法令無視、違法行為は許される」といった風潮が常態化しているのではないか、ということです。こうした状況に対して、警察をチェックする公安委員会、検察、裁判所、議会といった公の機関の機能は形骸化しています。報道機関の監視機能も弱まっています。内部告発を取り巻く情勢は、極めて厳しいことを知るべきです。
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