糖質制限ダイエットに隠れた「危険な落とし穴」 「流行りのダイエット」を鵜呑みにできない理由

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これは、貴重な長期にわたる大人数の研究結果ですが、「バランスの取れた食事をすることの大切さ」を示唆していると言えます。

「こういう食事がいい!」といったん話題になると、多くの人がその食事パターンを真似しようとします。ただ、どれだけ「体にいい食事」だったとしても、それを続けられなければ意味がありません。

ダイエット研究で、被験者にいつもと違う食事を長く続けてもらうことは難しいですし、加えて、食事パターンを長期にわたって追いかける研究を行うことも非常に難しい、という現実があります。

また、ダイエットの研究は、「アンケート」によるものも多く、正確性に疑問符がつくことも珍しくありません。健康診断などでは、「お酒を飲みますか?  飲むとしたら、週何回、一日に何合飲みますか?」という質問項目をよく目にすると思います。このような質問には、受診者の多くが過少申告をする傾向が知られていますし、わたしが実際に問診をする際にもそれを実感します。

「極端なダイエット」は避けたほうがいい

さまざまなダイエットはどれも短期的には効果があるけれども、長期では体重減少や重病のリスク因子を減らす効果はなくなるという研究もあります(※8)。また、どのタイプのダイエットを選ぶかよりも、きちんとやれるかどうかのほうが重要だという意見もあります。禁欲的なダイエットをずっと続けるのは難しく、リバウンドのリスクもあります。

そういう意味では、大病をしていない健康な人であれば、極端なダイエットに走るのではなく、できるだけゆるい、続けられるダイエット法を選んだほうがいいかもしれません。

糖質制限には、短期的にはかなり多くのエビデンスがあります。しかし、今まで繰り返し申し上げてきたように、「多くのエビデンスがあるから正しい」と言えるものではありません。「やせる」「短期的に、心筋梗塞のリスク因子を改善するようだ」ということは、いくつかの研究で証明されています。

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