「メリーチョコ」が70年も日本人に愛されるワケ バレンタインデー「告白チョコ」の生みの親
まず本格チョコレートとして、和の素材を使った「奏」は、2000年から出展している「サロン・デュ・ショコラ パリ」での経験に基づいてつくられたブランドで、抹茶やブランドいちごなど、こだわりの国産素材を用いているのが特徴。なお、ブランドを考案したトップショコラティエの大石茂之氏は2016〜2018年は金賞、2019年には「最高のショコラティエ賞」を受賞している。
そしてBean to Barとはカカオ豆の栽培から製品として仕上げるまでをメーカーが手掛ける、チョコレートにおける新しい流れだ。同社でも、現在は中止しているものの、東京大学との産学連携で、南伊豆の地熱を利用した温室で栽培されるカカオ豆をチョコレートとして製品化するプロジェクトに取り組んだ経験がある。
「老舗」という枠にとらわれず、さまざまなチャレンジをしてきている企業なのだ。
1958年に「告白チョコ」を提案
こうした幅広い展開は同社の社風が基盤となっている。同社は1958年、バレンタインデーの告白チョコという、チョコレートの新しい楽しみ方を提案した。ただ、初回のフェアで売れたのは50円の板チョコレートが3枚と、20円のメッセージカード1枚、170円という売り上げだったそうだ。
それが、60年以上経った今では「義理チョコ」などと、あたかも世間常識のような強制力をもったイベントともなっている。このように、一つの習慣を全国に根付かせるほど、輝きを持った商品であり、提案だったのだ。
バレンタインデーは同社において、「ワクワクドキドキする商品づくり」をモットーとした商品開発への思いを育ててきたと言えるだろう。
ただし老舗ゆえのよさ、あるいは同社の「よいものは食べてもらえばわかる」という、まっすぐなものづくりの姿勢と表裏一体と言えるのが、ネット販売における出遅れだ。
例えば、同社の販売チャネルを見ると、百貨店などの対面販売に重きを置いてきた。「大切な人に差し上げるものは実際に見て、味を吟味して選んでいただきたい」という企業姿勢からだ。しかしこのことが、2020年春の緊急事態宣言から始まるコロナ期において不利となった。今はオンライン通販にも力を入れ、徐々にオンラインでの売り上げを伸ばしているところだが、やはり2020年の業績は課題を多く残しているという。
また、現代では多くの企業が広告宣伝戦略に活用している、SNSによる投稿を始めたのは2015年からだ。以前は店頭への誘致目的だったが、コロナ禍に直面し、オンライン通販への誘致を強化。2021年バレンタイン商戦ではより投稿頻度を高めてきている。
すると、打てば響くような反応を得ることができた。「週に2回程度の投稿をするようになったら、厳しいご意見も含めて予想以上の反響が寄せられるようになり驚きました」と、広報担当者は語る。
成果と言えるのが、ある商品のヒットだ。
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