人間を襲う外敵と戦う「細胞」の超シビアな現実 そもそも「免疫」とはいったい何なのか

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自殺する細胞もいます。ウイルスに感染した細胞も自殺します。キラーT細胞は、相手の膜に穴を開けるだけではなく、その穴から自殺しろと命じる物質を送り込むことで、その細胞を死に追いやります。敵が来たとき「戦え」「戦うな」「自殺しろ」などとさまざまに命じられて、細胞は敵と日々戦っているわけです。

人間の社会だととんでもないことですね。細胞の世界はシビアです。

敵を排除する「免疫」の手段の1つが「抗体」

そして、敵を排除する3つ目の方法が「抗体」です。ワクチンのこともあり、よく聞く単語ですが、具体的にはどういうことでしょうか?

抗体は、ウイルスや細菌や、細菌が出す毒素の働きを妨害したり、相手の細胞を殺すきっかけをつくったりします。

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詳しくいうと、抗体はタンパク質です。体の中の物質の主役はタンパク質です。B細胞と呼ばれる細胞の中でつくられ、細胞内の輸送網を使って細胞の外に放出されます(分泌と言います)。B細胞は、それぞれの敵に効くように、相手の特徴に合わせて異なる抗体をつくり出しています。

ここまでで、食細胞とかキラーT細胞とかB細胞とか出てきましたが、これらをひっくるめて免疫細胞と呼びます。 免疫を専門にしている細胞という意味です。

ほかにも、免疫細胞には樹状細胞とか、ヘルパーT細胞とかいろいろありますが、ここではこれ以上触れません。なお、免疫細胞をプロフェッショナルな細胞と呼ぶこともあります。免疫を職業にしているプロということですね。

さて、これでみなさんは免疫の話はざっとマスターできたと思います。免疫については、抗体がいちばん強いというわけではなく、何が効くかは敵次第です。

吉森 保 細胞学者、大阪大学栄誉教授

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よしもり たもつ / Tamotsu Yoshimori

大阪大学理学部生物学科卒業後、同大学医学研究科中退、私大助手、ドイツ留学ののち、1996年オートファジー研究のパイオニア大隅良典先生(2016年ノーベル生理学・医学賞受賞)が国立基礎生物学研究所にラボを立ち上げたときに助教授として参加。2017年大阪大学栄誉教授。2018年生命機能研究科長。大阪大学大学院生命機能研究科教授、医学系研究科教授。

大阪大学総長顕彰(2012~15年4年連続)、文部科学大臣表彰科学技術賞(2013年)。日本生化学会・柿内三郎記念賞(2014年)、Clarivate Analytics社Highly Cited Researchers(2014年、2015年、2019年、2020年)。上原賞(2015年)。持田記念学術賞(2017年)。紫綬褒章(2019年)。

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