環境破壊を「甘く見る人」が2040年直面する苦難 今後「戦争の引き金」にだってなりうる

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ちなみに、深刻な水不足に陥る地域はパキスタンやインド、中国だ。いずれも核保有国だ。アメリカが「世界の警察」を自負しているなら、にらみ合いになっても着地点を見いだせたかもしれないが、残念ながら自他共に認めていない今となっては、ワーストシナリオも想定しなければならないだろう。北半球の先進国は軒並み疲弊しており、自国の問題だけで手いっぱいなはずだ。

気候変動がもたらす不安や連鎖反応が最悪の展開になることは広く知られる。気温と暴力の関係を数値化する研究によると、平均気温が0.5℃上がるごとに、武力衝突の危険性は10~20%高くなるという。

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もちろん、どこまで温暖化が進むかはわからない。今回、気温上昇のいくつかのシナリオを想定したが、現時点で、2040年に気温がいくら上がるか特定することは難しい。大気の成分の変化が、どの程度の気候変動につながるかは予測できない。また、これから20年、世界ではどのようなエネルギーがどういう状況で使われるか、林業や農業などが新興国でどの程度広がるかなど不確実性が高い。

とはいえ、どのような対策を打とうが、2040年の世界が、明らかに現在より肌感覚で暑くなっているのは間違いないだろう。

地球温暖化は、人口が増え、経済活動を続ける限り、回避は不可能だ。そして、戦争と違って、世界の誰かによって適切な方針が決められ、あっさり回避することもない。あなたのあらゆる経済活動や消費活動が温暖化の原因になっており、それが将来のもめ事のきっかけになりかねないことを私たちは自覚すべきかもしれない。

解決のカギはテクノロジー

どうだろうか、ここまであまり解決策を示さず、ワーストシナリオをひたすら示してしまった。お先真っ暗な気持ちで不安ばかりが募ってしまった人もいるだろう。

自然が相手だけに、予測も対策も難しい面もあるのだが、個人的には過去の記事でも示したように、テクノロジーが解決してくれるのではと楽観的に考えている。

テクノロジーが解決する根拠を示せといわれれば難しい。100年前の人は、100年後には地震や噴火を完璧に予知できるようになると考えていたが、できていない。ただ、一方で、なくなるといわれていた石油は、枯渇していないし、核戦争も起きていない。公害が深刻化して住めないような場所もでていない。危機に直面してもテクノロジーで解決の道筋を示してきたのが人類なのだ。

成毛 眞 元日本マイクロソフト社長、HONZ代表

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なるけ まこと / Makoto Naruke

1955年北海道生まれ。元日本マイクロソフト代表取締役社長。1986年マイクロソフト株式会社入社。1991年、同社代表取締役社長に就任。2000年に退社後、投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立。現在は、書評サイトHONZ代表も務める。『amazon 世界最先端の戦略がわかる』(ダイヤモンド社)、『アフターコロナの生存戦略 不安定な情勢でも自由に遊び存分に稼ぐための新コンセプト』(KADOKAWA)、『バズる書き方 書く力が、人もお金も引き寄せる』(SB新書)など著書多数。

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