日本も無関係じゃない「中豪関係悪化」の波紋 「相互依存の罠」から抜け出すために必要な知恵

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日本にとってかけがえのない外交パートナーであるオーストラリアが現在、中国市場から主要産品が締め出されるなど貿易紛争にさいなまれ、両国関係が急速に悪化している。発端は、新型コロナウイルスの拡大後の2020年4月23日、モリソン首相(Scott Morrison)による「(武漢で)何が起きたのか、 独立した調査が必要」との発言が、世界規模での訴訟に拡大することを懸念した中国の激しい反発を呼んだことによる。

中国政府は関係各社に輸入制限のブラックリストを伝達し、そこにはオーストラリアからの石炭や大麦、 銅鉱石・銅精鉱(コンセントレート)、砂糖、木材、ワイン、ロブスター等、少なくとも7品目が入っており、2019-20年におけるオーストラリアの輸出全体(サービスを除く)の約7%、271.5億豪ドル(約2兆円)に相当する。

中国の「相互依存の罠」と4割の衝撃

例えば2019年12月に11万トン強あったオートラリア産銅コンセントレートの輸入は、1年後にはゼロとなっている。11月も約21トンの豪産活ロブスターが上海の空港で足止め状態となり、以降、中国への輸出をすべて止めざるを得なくなっている。中国がオーストラリア経済にこれほどまでの打撃をしかも短期間に与えることができたその要因は、現在4割を超えるまでに至ったオーストラリアの中国市場に対する輸出依存度の高さにある。

オーストラリアは日本とは政治・外交分野でのパートナーシップを丁寧に育んできた一方、この10年の経済成長の糧を急速に拡大する中国市場に求めてきた。中国とは民主主義や法の支配などの価値観を共有せず、政治・外交的立場の違いが顕在化しやすいオーストラリア、そして日本のような国は、中国が仕掛ける「相互依存の罠」のターゲットになりやすい。 

「国際的なサプライチェーンをわが国に依存させ、供給の断絶によって相手に報復や威嚇できる能力を身につけなければならない」と習近平国家主席が述べたように、世界130カ国以上の国々にとって最大の貿易相手国となった今日、中国は自国の政治的・戦略的利益を実現するために、その甚大な経済力を駆使し、影響力を行使できる立場にある。

このため、貿易と援助提供を通じてますます深化する中国とアジア太平洋諸国の経済相互依存関係は、中国の国益実現のための「環境」を作り出していることを意味し、中国に経済的に依存している国々にとって、同国の政治、外交姿勢を批判することは、その経済依存を減じ、威嚇する処置を取ることを厭わない中国に対しては困難になる。

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