菅首相、危ういワクチン&五輪頼みの政権運営 五輪中止論が急浮上、3月の聖火リレーが焦点に

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菅首相はそもそも、インバウンド重視の立場から五輪開催を「経済を回復させる起爆剤」(政府筋)と位置づけている。菅首相の支持グループは「五輪の成功をはずみにして解散総選挙に踏み切り、秋以降の続投につなげる」(側近)シナリオを描く。まさに「ワクチンと五輪が菅政権継続の命綱」(自民幹部)というわけだ。

ただ、菅首相の周辺も「米欧などの大きな国から選手が参加しないと、大会として成り立たない」との不安を隠さない。主要国の五輪委員会などは今のところ五輪開催への期待と決意を表明しているが、それも今後の状況次第だ。

アメリカが参加断念なら即時中止に

そこでポイントとなるのがテレビ放映権を握るアメリカの対応だ。IOCの五輪開催費用はテレビ局が支払う巨額の放映権料に依存しており、NBCテレビの放映権料は全体の約半分を占める。コロナ禍の早期収束が見込めず、アメリカが五輪参加を断念すれば、「IOCも即時中止決定に追い込まれる」(JOC関係者)のは間違いない。

20日に大統領に就任したばかりのバイデン氏は28日未明に菅首相との初の電話首脳会談を行った。菅首相は会談終了後、「バイデン大統領との個人的関係も深めつつ、日米同盟の強化に向けてしっかり取り組んでいきたい」と対米外交への意欲と自信を語った。しかし、注目の五輪開催については「今回はやり取りはなかった」と語り、記者団を拍子抜けさせた。

菅首相は同大統領と「ジョー、ヨシと呼び合うことにした」と胸を張ったが、訪米しての首脳会談については「可能な限り早い時期で調整していくことになった」と具体的日程には踏み込まなかった。

官邸サイドは当初、「2月下旬の連休中の訪米」をアメリカ側に打診していたとされる。しかし、「日米関係は安定しており、バイデン大統領にとっては最優先課題ではない」(アメリカ専門家)とされ、菅首相の年度内の訪米は「望み薄」(同)とみる向きが多い。

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