菅首相、危ういワクチン&五輪頼みの政権運営 五輪中止論が急浮上、3月の聖火リレーが焦点に

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1月26日の衆院予算委員会では立憲民主党の辻元清美副代表が「次は『Go Toオリンピック』になりはしないか」と批判。「Go Toトラベル」を引き合いに出して、五輪開催ありきともみえる菅政権への不信感をあらわにした。

辻元氏は同委員会で「無観客も検討しているのか」「アスリートも不安であり、3月下旬に聖火リレーが始まる前に結論を」と質した。これに対し、橋本聖子五輪担当相は「春までの状況を踏まえ、しっかり検討する」とはぐらかし、菅首相は「橋本担当相が答えたとおり」と語るのみだった。

これに先立ち、東京五輪開催の可否について、イギリスの大手メディアが21日、「日本政府が非公式に中止せざるをえないと結論づけた」と報じ、内外に波紋を広げた。事態を憂慮した政府は22日、「そのような事実はまったくない」と否定するコメントを発表した。

菅首相側近は「どこかで判断」と発言

コメントは「政府としては、感染症対策を万全に、安全・安心な大会の開催に向けて、IOC(国際オリンピック委員会)や大会組織委員会、東京都などと緊密に連携して、準備をしっかりと進めていく」という内容。小池都知事も「私は一切聞いていない。抗議を出すべきではないか」と真っ向から報道を否定してみせた。

そうした中、菅首相側近の坂井学官房副長官が「海外の状況などもあり、どこかの段階で実際に開催するかどうか判断を行う」と微妙な発言をして波紋を広げた。これについて、橋本担当相は「政府の方針とはまったく異なり、この夏の開催はすでに決定している」と不安払拭に躍起となっている。

一方、日本医師会の中川俊男会長は都内の講演で「神がかり的な出来事があれば別だが、選手団だけでも大変な数で、もし新たなコロナ患者が発生すれば、今の医療崩壊が頻発している状況の下で受け入れ可能かというと、可能ではない」と悲観的見解を表明した。

柔道世界選手権の金メダリストでもある山口香・日本オリンピック委員会(JOC)理事は19日、「(開催の可否の)判断が長引けば長引くほど国民の気持ちが五輪から離れていく。五輪を嫌われ者にしないでほしい」と3月上旬までに判断すべきだと訴えた。

ここにきての世論調査では五輪の再延期や中止を求める声が拡大し、「予定どおり開催」への支持率は平均でも2割以下となっている。菅首相は2月下旬から開始予定のワクチン接種に「国民の雰囲気も変わってくるのではないか」と期待をつなぐが、「コロナ禍への恐怖と不安が国民の五輪期待論を押しつぶしている」(自民長老)のが実態だ。

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