菅首相、危ういワクチン&五輪頼みの政権運営 五輪中止論が急浮上、3月の聖火リレーが焦点に
そもそも今夏の五輪開催は安倍晋三前首相が2020年3月に決断したものだ。2年延期論もある中での1年延期の決断は、「自らの任期(2021年9月まで)中の開催にこだわった結果」(自民幹部)とみられている。2020年8月に安倍氏が退陣し、後継者となった菅首相にとって「ある意味で負の遺産」(首相周辺)でもある。
菅首相に近い日本維新の会の吉村洋文大阪府知事と松井一郎大阪市長は、2024年パリ大会を4年延期し、2024年に東京五輪を開催するという「スライド開催論」を唱える。「菅首相への助け舟」(維新幹部)ともみえるが、パリ五輪組織委のエスタンゲ会長はこの案を言下に否定している。
中止・延期は「菅降ろし」のきっかけに
こうした状況だけに、「菅首相がわずかでも中止・延期案の検討をにじませれば、流れは一気に中止の方向に進む」(閣僚経験者)のは避けられない。その場合、「国内政局でも菅降ろしのきっかけになる」(同)ことは確実。だからこそ菅首相も「(中止や延期は)口が裂けても言えない」(側近)ことになる。まさに辻元氏が指摘した「GoToオリンピック」だ。
冬期五輪も含めた日本の五輪開催の歴史を振り返ると、1964年の東京夏季五輪の際は、閉幕直後に池田勇人首相(当時)が病気を理由に退陣した。次の1972年札幌冬季五輪の後の7月には佐藤栄作首相(同)が長期政権の末に退陣。さらに、1998年長野冬季五輪の後もやはり、7月の参院選で自民党が大敗し、橋本龍太郎首相(同)が退陣に追い込まれている。
今年の政局の最大の焦点は解散総選挙と自民党総裁選。すでに「解散は五輪後」(自民幹部)との声が支配的だが、仮に予定通りの五輪開催にこぎつけても、無観客など変則的な開催となれば「菅政権の評価には結びつかず、逆に『五輪花道論』が出かねない」(自民長老)という。
五輪開催に絡む不吉なジンクスを菅首相が打破できるのか。「すべてはコロナの感染収束とワクチン接種という神頼み」(同)となりそうだ。
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