名古屋発「フルーツ大福弁才天」驚きの誕生秘話 東京や大阪にも出店、2021年に50店舗の見通し
今やグルメのブームは、インスタなどのSNSで「映える」ことが必須。そんな昨今の傾向に筆者はやや食傷気味になっている。数多くの飲食店を取材する中で「うまいものは、手を加えなくても美しい」という考え方が根底にあるからだ。
ここ1、2年で名古屋のみならず、東京や大阪にも続々とオープンしている「覚王山フルーツ大福 弁才天」(以下、弁才天)もSNS映えを狙って成功を収めた、いわば一昨年に大流行したタピオカドリンクと同列視していた。
求肥と白あんがフルーツの引き立て役
「弁才天」のフルーツ大福には、専用の餅切り糸が添えられていて、大福に巻きつけて引っ張ると半分に割れる。その断面が美しい、いわゆる“萌え断”であることから、地元のテレビや雑誌はこぞってSNS映えを強調していた。
筆者にとっては、そんなことはどうでもよい。肝心なのは味である。寒い中、行列に並んで買ったブランド苺の大福「紅ほっぺ」を実際に食べてみることに。
あえて糸を使わずにかぶりついてみると、求肥のやわらかな食感と白あんの甘さとともに紅ほっぺの酸味と甘味が口の中で1つになった。主役は紅ほっぺであり、バランスが緻密に計算された求肥と白あんはその引き立て役なのだ。一方、従来のいちご大福は、大福がメインであり、いちごは大福の甘さを抑えて食べやすくするものだった。
なぜこのような発想が浮かんだのか。どうしても話が聞きたくなり、「弁才天」を運営する株式会社弁才天の大野淳平社長を訪ねた。
取材場所に指定されたのは、名古屋の都心にあるタワーマンションの応接フロアで、コンシェルジュが出迎えてくれた。まさに成功者の証しではないか。色黒&ムキムキで高そうなスーツ、胸元が開いたワイシャツというビジュアルが頭の中に浮かんだ。
ところが、目の前に現れた大野さんは、長髪&ひげ、ニットのセーターとコーデュロイのパンツという出で立ち。しかも、小脇にMacBookを抱えていた。経営者というよりも筆者にとってはなじみ深い雑誌編集者に見えた。
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