名古屋発「フルーツ大福弁才天」驚きの誕生秘話

東京や大阪にも出店、2021年に50店舗の見通し

味を完成させるのと同時進行で店舗作りも進めていた。和菓子の世界は伝統と格式が重んじられており、新規参入は困難であることから、いかに老舗「感」を醸し出していくのかがカギを握る。

また、フルーツ大福というのは老若男女問わず好まれることから、ターゲットを絞ることはせず、多くの人々に親しまれる普遍的なデザインにする必要があった。そこでテーマを「老舗の和菓子屋の4代目が立ち上げた新ブランド」でいくことにした。

実際に本店の店内を見ると、無駄なものは一切排除されている。例えるならば、Appleストアを和風にしたような空間。その反面、壁にかかった木札やショーケースに用いている畳にどこか懐かしさを感じる。

「覚王山フルーツ大福 弁才天」覚王山本店の店内。一切の無駄を排除した美しさがある(写真:弁才天)

目指したのは、育てられるカルチャー

こうして、2019年10月に第1号店となる「覚王山フルーツ大福 弁才天」覚王山本店がオープンした。SNSで拡散されたこともあり、瞬く間に行列ができる人気店となった。

「従来のフルーツ大福との違いがわかる人にだけ支持されればよいと思っていましたから、まったくの想定外でした。SNS映えすることがメディアで取り上げられることもあり、そのたびにタピオカドリンクと同列に扱われているようで違和感をおぼえました。僕が作りたかったのはトレンドではなく、カルチャーなんだと言いたかったです」

大野さんは、「弁才天」をオープンさせる前、当時はやっていたバルを経営していた。マーケティングを重視して、はやっているものをいち早く取り入れ、新規集客のために広告宣伝費を何百万も使ったという。ところが、月日を追うごとに売り上げは下降の一途をたどり、ついには手放してしまった。移り変わるトレンドではなく、育てられるカルチャーを目指したのは、そんな苦い体験があったからだろう。

売り上げを伸ばし、名前も広く知れ渡るようになると、全国からFC展開の問い合わせが殺到した。が、FC展開することがなんとなくカッコ悪く思えて、踏ん切りがつかなかった。そんな中、わざわざ遠方から買いにきたものの、すでに売り切れていて、とても残念そうに帰っていくお客の姿を見て多店舗展開を考えるようになった。

ただ、FCというフレーズがどうしても受け入れることができなかったため、日本古来の「のれん分け制度」という名称にした。これは、誰もが簡単にライセンスを取得できないことも意味している。お金儲けよりも大野さんの言う、「トレンドではなくカルチャーを作る」ことに共感した人だけが「弁才天」ののれんを上げることができるのだ。

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