優秀な部下でも「適応障害」になりうる背景事情

ストレスに対処できる能力に生物学的な限界

うつ病と適応障害を医師はどう区別しているのでしょうか(写真: Blue flash / PIXTA)
社会的な課題になっている職場のメンタルヘルス対策。たとえ仕事で優秀な人だとしても、ストレスの具合によっては適応障害が起こりうるようです。前編記事『「部下のメンタル不調」を見抜く3つのサイン』に続いて、30年にわたる臨床経験を持つ心療内科医である森下克也氏の著書『もし、部下が適応障害になったら──部下と会社を守る方法』より一部を再編集してお届けします。

似ているようで違う概念

適応障害は、正常なストレス反応からくる、誰にでも起こりうる心身の変化です。きわめてわかりやすくシンプルです。特殊な精神疾患では、ありません。ごく普通に働いていた人が、何らかのストレスにさらされ、最初はうまく対処できていたのにやがてできなくなる、そんな当たり前の心理反応なのです。

基本的に診断は、アメリカ精神医学会の作成した診断基準にのっとって行われます。重症度は、ストレスの程度と罹病期間、その人のストレス対処能力によります。経過が長引く、ストレスがあまりにも大きいなどといったことがあれば、たとえ環境要因が取り除かれても病状が残ることがあります。そういう場合は、うつ病や神経症など、ほかの精神疾患に移行したと判断されます。

ここで押さえておいていただきたいのは、うつ病と適応障害の違いです。両者は似ているようで異なる概念です。うつ病では、意欲や気力、興味を喪失し、自分を責め、罪深いと感じます。また、身体的にも、頭痛や倦怠、不眠など、さまざまな不定愁訴を訴え、日常生活に支障を来します。

それらは適応障害でも見られるじゃないかと言われそうですが、適応障害は、そうした不調の原因が職場のストレスなど、外部の環境要因であることが明らかです。一方、うつ病では、外部環境以外にも性格や人格障害、脳内の神経伝達物質の異常など、別の原因が複数考えられます。つまり、うつ病は適応障害よりも広い概念で、その1つのパターンとして適応障害があるという位置づけになります。

両者を厳密に分けておいたほうがよい理由は、うつ病とした場合、その原因が外部環境のストレス以外の問題にすり替えられてしまう可能性があるからです。

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