優秀な部下でも「適応障害」になりうる背景事情 ストレスに対処できる能力に生物学的な限界

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この戦闘モードがいつまでも続けば、あなたの部下は決して燃え尽きることはないでしょう。定年まで、すばらしいアウトプットを出し続けてくれます。しかし、この機能には限界があります。なぜか。抗ストレスホルモンの分泌が枯渇してしまうからです。決していつまでも続くものではないのです。

どのくらいで枯渇するかは、ストレス強度によります。たとえば、ボクシングのような極限のストレス状態では、3分程度です。大勢の前で行うプレゼンテーションを休憩なしで行う場合は3時間ほど、残業の連続といった慢性的な過重労働では1〜3年ほどで限界がやってきます。

これは、人間が燃え尽きるおおまかな目安として知っておくとよいでしょう。どんなに頼もしくタフに見える部下でも、過重な労働環境が続けば、確実に疲弊し、燃え尽きてしまうのです。

適応障害を構成する3つの要素

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その燃え尽き、つまり適応障害は、3つの要素に分けてとらえるようにしてください。つまり、外から押し寄せてくるストレス=職場環境(外部要因)、その人の感じ方や考え方という心理的要素(内部要因)、そして、そのストレスにさらされた期間(時間要因)です。これらが、ケースごとにさまざまな比率で存在しています。

たとえば、性格や考え方に問題がなく、あるのは外部要因のストレスだけという部下がいたとします。こういうケースは、職場環境さえ改善されれば比較的早く改善します。一方、いつまでもクヨクヨと考えこみ、ストレスの期間が長びく例では、自宅安静に入ってもなかなか適応障害が改善しません。

物理的に職場から離れても、感じ方や考え方である内部要因に問題があれば、心の中にいつまでも悩みを抱えてしまいます。心が休まらず、抑うつ、不安、不眠や食欲不振などの症状が続き、長引けば長引くほど時間要因が加わり、症状を悪化させていきます。

上司として考えていただきたいのは、これら3つの要素のいずれもが職場側に介入の余地があるということです。部下のメンタルヘルス不全に直面したとき、「困った」「どうしよう」などと感情的に反応してしまうのではなく、これら3つの要素に整理して考えれば、冷静に適応障害を理解することができます。

メンタルヘルスに支障を来しているなと思う部下を見かけたら、まず「外部要因は何だろう」「内部要因は何だろう」「時間要因は何だろう」と考えてみてください。

森下 克也 医師

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もりした かつや / Katsuya Morishita

1962年、高知県生まれ。医学博士、もりしたクリニック院長。久留米大学医学部卒業後、浜松医科大学心療内科にて永田勝太郎先生に師事、漢方と心療内科の研鑽を積む。浜松赤十字病院、法務省矯正局、豊橋光生会病院心療内科部長を経て現職。心療内科医として、日々全国から訪れる、うつや睡眠障害、不定愁訴の患者に対し、きめ細かな治療で応じている。
『薬なし、自分で治すパニック障害』(角川SSC新書)、『不調が消えるたったひとつの水飲み習慣 』(宝島社)、『うつ消し漢方』(方丈社)など、著書多数。

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