2014年にBtoCのクラウドが完成する--『クラウド時代と〈クール革命〉』を書いた角川歴彦氏(角川グループホールディングス会長兼CEO)に聞く
--クール・パワーから書き始めていますね。
クールが私自身、肌身にしばしば感じられるようになった。この日本のサブカルチャーを評価する言葉がいまや世界標準。以前はクールはアメリカでも決していい言葉ではなかった。小ざかしいとか小利口とか、そういう意味で使われてきて、それが「すごい」「カッコいい」に昇格した。当のアメリカ自身がクールでないといけないと言い出した。いままでの車ならクールではない、これからは電気自動車がクールみたいに。
アジアでも、この前、シンガポールのパーティで政府高官と、何がクールかという話で盛り上がった。たとえば傘を開くと、この雨はいつまで降るのかと予報表示が出る、そうなればクールだよねとか。香港のホテルでは、部屋に置いてあるガイド本に、このホテルのサービスはクールと書いてあるのを見つけた。スパやサウナが快適、それをクールと表現している。
かわいいも、世界に通じるとってもいい言葉だが、クールはそれを万人向けにした言葉といえるかな。
--クール革命も、クラウドがあればこそでしょうか。
この本のメインはクラウド。Web2・0は100万人単位で人を集めるのに成功したが、メークマネーでは、勝者は1人、敗者多数という状況をつくってしまった。いまポストWeb2・0の時代、つまりクラウド前夜にいて、Web2・0の事業をどうメークマネーにもっていき、企業の発展の中で位置づけられるかが、一大テーマになっている。
--覇権を争うIT三国志との表現も出てきます。
実感したのはグーグルの本社に行ったときだ。「短期間のうちにこんないい場所をよく見つけたね」と言ったら、聞いてはほしくない顔だった。この土地にはシリコングラフィックスがあった。同社はそれこそCG技術が始まったときの日の当たる会社だった。そのWeb1・0の会社をポストWeb2・0の会社が駆逐してビルを建てる。これはまさにWeb三国志。この競争の現実がこの本の底流になっている。