ギリシャ戦、ザック采配がことごとく裏目に 守り倒す相手から点が取れない課題を露呈した日本

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最後の最後まで残り1枚の交代カードを切らなかったのも不可解だった。結局は使い慣れていて、信頼できるメンバーしか投入できないということだ。ザック監督の石橋を叩いて渡る選手起用は今に始まったことではないが、この大舞台で硬直してしまうとは…。長友が「自分たちで自爆した」とため息交じりで語ったように、この日の日本は自ら勝ち点2を失ったのである。

ザックジャパンは5月21日にスタートした指宿合宿を皮切りに、アメリカでの事前合宿を経て、ブラジルに乗り込んできたが、選手たちのコンディションが上がり切っていないように感じられる。猛暑の環境での走力を高めるために負荷をかけすぎた、涼しいイトゥをベースキャンプ地に選んだことの影響など、さまざまな指摘もある。それは大会後にしっかりと検証しなければならないが、ここまで指揮官が「全て順調に進んでいる」と言い続けてきたことに疑問が湧いてきて仕方がない。

最終戦が今後に与える影響は大きい

とはいえ、もはやここまで来たら、こうしたネガティブな部分だけ分析していても何も始まらない。今の日本代表にできるのは、24日の最終戦・コロンビア戦(クイアバ)に向けて心身ともに回復を図り、必ず勝利をもぎ取ること。それしかない。コートジボワールがギリシャを下して、最終的に突破は叶わなかったとしても、勝って終わるのと負けて終わるのでは今後の日本代表や日本サッカー界に及ぼす影響は大きく違ってくる。

「南アの後、日本代表の影響力ってホントにすごいものがあるんだなって改めて感じました。僕らが10年後、20年後の日本サッカー界を背負ってる。ブラジルでいい結果を出して、ワールドカップが子供たちの現実的な目標になってくれればホントにうれしい」とベテラン・遠藤保仁(G大阪)もしみじみ語っていたことがあった。それだけ彼らの責任は重いのだ。だからこそ、最後だけでも今後への希望を感じさせるような清々しい戦いを何としても見せてほしいものだ。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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