中野 ある流通系企業の経営者が、「GPIFが運用している129兆円全部で日本株を買え」って発言したじゃないですか。本人は、その資金で企業統治を変えるべきだと言っているのですが、それはおかしい。そもそも、GPIFが運用しているおカネは、私たちのおカネなのですから、私たちにきちっとリターンが返ってくることを第一義にすべきものであって、企業統治を変える、あるいは成長戦略に利用することを目的にして使われるべきものではないと思います。
渋澤 そのおカネが日本経済の成長につながり、引いては私たちの老後資産の成長にもつながるならいいけれどもね。言い方は悪いけれども、ゾンビ企業にまで回ってしまうとしたら、本末転倒です。
大切なおカネを増やすためには、何が必要か
藤野 ヨーロッパの年金運用の話を聞くと、それこそ20年、30年のキャリアを持つ人が運用していて、年間180日くらいはリサーチのために世界中を回っています。そういう経験も知識も兼ね備えたベテランが、後進を育てている。GPIFも、トップから現場に至るまで、もっとプロ意識を持っていただかないと、大事な国富が毀損してしまいます。
中野 そのためには、何が必要なんでしょうか。
藤野 運用に対するリスペクトがもっと必要でしょうね。非常に現実的な話ではありますが、もっと運用担当者の給料を上げるとかね。
渋澤 海外の年金運用担当者って、待遇もかなり良いらしいですからね。
藤野 まあ、それ以前に投資信託も含めて機関投資家が、本当にプロなのかどうかという議論が必要になってきますけれども・・・・・・。だって、運用の自由度が物すごく狭いじゃないですか。アクティブ運用といっても、たとえばTOPIXとの乖離を10%以内に収めろといった縛りがあったり、銘柄も縛られて運用していたりね。
中野 かなり運用の細かいところまで決められているケースが多いですよね。そうやって運用者を縛っておけば、変なことをされずに済むということなのでしょうけれども、「これしか買えない」というような縛りが設けられていると、そのマーケットが壊れた時、他の手が打てなくなるじゃないですか。
藤野 特に投資信託なんかは、運用競争よりも販売力がすべてという面があるじゃないですか。運用努力をしなくても、販売金融機関が売ってきてくれる。誤解を恐れずに言えば、ファンドのパフォーマンスは二の次。だから、TOPIXと同じ程度のリターンがあれば十分ということになって、ベンチマークからの乖離を抑えるような指示が、上層部から降りてくるというわけです。
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