「名古屋めしチェーン」がイタリア進出の事情 すしやラーメンではない「本場の味」への需要

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30年前と今では状況が大きく異なる。当時のイタリア人にとって、すしはまだまだ見慣れない食べ物で、生魚を受け付けない人も多かった。オープンしてもどれだけの来客があるかわからなかったため、最初は日本食材店のスペースの一角で、屋台カウンターを置いてすしを握っていたのだとか。

ポポロ屋の平澤稔氏(写真:筆者撮影)

「当時はすしを握っても『小さくて食べごたえがない』って怒られたりしたもんですよ。だから要望に合わせて、すし飯の量を変えて握り分けていました。ちらしずしも上の魚だけ食べてご飯を残す人が多かったから、すし飯の中にもネタを挟んで全部食べてもらえるように工夫したんです」という平澤氏の言葉からは、当時の苦労がうかがえる。

「裾野を広げるためには、まずは食べてくれる人が増えないといけない。だからイタリアの人に好まれる味を追求した」という努力が実を結び、少しずつ口コミで客が増えていったのだという。

「本場の味」を求めるイタリア人

こうした風向きが少しずつ変わってきたのは1990年代後半のこと。日本の漫画ブームがイタリアにも及び、日本文化に興味を持った人がすしを食べに訪れるようになった。

加えて、1993年以降の円安イタリア・リラ高の影響もあり、日本へ旅行するイタリア人が増えたことも追い風になる。日本で本場の味を体験したイタリア人が、戻ってきてからも和食を求めるようになった。

ミラノの中心街近くに位置するポポロ屋(写真:筆者撮影)

「今ではお客様のほとんどがイタリア人です」という平澤氏の言葉通り、週末ともなると軒先には店内に入りきれなかった人々が行列を作るほど賑わう。その多くは、イタリアではそれほど多くない、日本人料理人による本物の味を求める客だ。

イタリアではすっかり浸透した和食だが、現在はどのような店があるのだろうか。ここで少し、イタリアにおける日本食レストランの形態をまとめてみたい。

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