「名古屋めしチェーン」がイタリア進出の事情 すしやラーメンではない「本場の味」への需要
世界中で再び感染者が増加している新型コロナウイルス。日本ではすでに2度目の緊急事態宣言が出され、東京、大阪、福岡など10の都府県において飲食店の営業時間の短縮要請が行われている。イタリアでもレストランやバールの営業時間は18時まで、また感染拡大中の地域では店内の飲食を一切禁止し、テイクアウトや配達のみとする措置がとられている。
どこも気軽に外食できる状況ではないが、一方でイタリアの外食需要はコロナ禍の中でも高く、テイクアウトを中心に日本食の人気も高い。今回の記事では、イタリアに9年暮らしてきた筆者の目線から、現地の日本食レストラン事情について紹介したい。
「健康にいい」イメージの日本食
イタリアでは和食の人気が高い。街を歩いていても日本食レストランは頻繁に目にする。ピッツェリアやイタリア料理のレストラン、ケバブなどのファストフードに次いで多いと感じるほどだ。
イタリア人は基本的に食に対して保守的で、外国の食事よりも自国のイタリア料理を好む傾向が強い。その中で、ヨーロッパの文化圏とは程遠い、しかも食材も大きく異なる日本食が受け入れられている。
日本食がイタリアで好まれる理由の1つとしてよく言われるのが「健康にいい」という点だ。スローフード発祥の地でもあるイタリアは食に対する意識が高く、日本食は健康にいい食材をふんだんに使うとして好意的に受け取られている。肉よりも魚や野菜が中心で、さらにみそや漬物などの発酵食品をよく食べる。また、小皿文化のため一度に食べる食材の種類が多いことなどがその理由だ。
また日本食の定番でもあるすしは、アペリティフ文化と相性がいいのも理由のひとつだ。イタリアではお腹を空かせるため、食前に軽いアルコールを飲む習慣がある。多くの店ではドリンクを1杯注文するとおつまみがついてくるというシステムになっており、すしを提供する店も多い。
店の人気は立地や店内の雰囲気だけでなく、つまみの内容でも大きく左右される。フィンガーフードとして食べやすく、人気の高いすしを提供することで、他店との差別化を図ろうというわけだ。
日本食は今でこそイタリア人の生活に定着した感があるが、そこには先人たちの努力があることも忘れてはならない。1989年にミラノですし店をオープンしたポポロ屋の平澤稔氏は「当時は来店する人のほとんどは駐在員か買い付けのためにミラノを訪れたバイヤーで、イタリア人のお客様は5%にも満たなかった」という。
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