「名古屋めしチェーン」がイタリア進出の事情 すしやラーメンではない「本場の味」への需要
サガミのメニューの主軸となるのは、同社の原点でもある「名古屋めし」だ。メニューには、みそカツ丼や手羽先などの地域料理が並ぶ。その一方で、イタリアで日本食の定番とされているすしやラーメンなどのメニューがないことが特徴的だ。
運営元のSAGAMI ITALIA S.R.L.の伊左次誠氏に人気の高いメニューをたずねてみると「みそとんかつ丼のほか、麺類では豆乳坦々うどんやカレーうどん、一品料理ではみそ串カツのほか和風春巻き、たこやきなどが人気です」という答えが返ってきた。
すしやラーメンなど、いわゆる「外国人がイメージしやすい日本食」にこだわらないラインナップについて、伊左次氏は「すしについてはすでにほかの方々がイタリアに伝えてくださった。われわれはもっと違う役割を果たしたい」と語る。
日本の日常食を提供
同社では2018年の本格的なオープン前に、2016年に2カ月半、2017年に1年の期間限定で試験的に小型レストランを運営した。その際に「すしやラーメンは非常に強いアイテムだが、それ以外の日本の地域料理や日常食を求めているイタリア人が多いことを強く感じた」という。すしやラーメンなどイタリアでイメージされやすい日本食ではなく、日本で普段食べられている食事を提供することで、他店との差別化を図りたいという考えだ。
イタリアではミラノやローマなどの大都市はともかく、小都市では日本食が食べられるのはフュージョンレストランのみという場所も多い。こうした環境の中で、日本を再現した本物の日常食を提供することはリスクになる可能性もある。しかし、人口18万人の地方都市であるモデナに店をオープンした際は「想定以上にご来店いただき、日本人による本当の地域料理や日常食を求める人の多さに改めて驚いた」という。
すしやラーメンなどの「鉄板メニュー」をあえて外し、地域料理や日常食にこだわった同社の戦略が正しかったことは「モデナ店やボローニャ店はお客様の9割がイタリア人」という点にも表れている。伊左次氏は「基本的にはこのまま地域料理や日常食を軸にして、イタリアで王道のレストランといえば『SAGAMI』と思っていただけるようにしたい」と意気込む。
かつては海外で日本食といえばすしのことを指す時代もあったが、先人たちの努力もあって今や裾野は大きく広がった。日本食レストランは日本人の料理人だけによるものではなくなり、現地の舌に合わせたフュージョン化も進んでいる。そして、定番の日本食ではない地域料理や日常食が求められるようになった。ここにきて、海外の日本食事情は新たな局面に入ったと言えるのかもしれない。
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