日本電産の新たな野望、電気自動車マーケットへ食い込む
EVやHEVの普及は、自動車産業でのパラダイムシフトを起こす可能性をはらんでいる。
ガソリン車ではエンジンを生産する完成車メーカーと、変速機やクラッチなどの供給企業間で高度な技術の“すり合わせ”が求められた。だが、2次電池とモーターで駆動するEVはそれらの部品が配線でつながっていればよく、変速機も不要になるなど仕組みが簡略化される。
そのため、産業構造は自動車メーカーを頂点とした系列化による垂直統合型から、電池専業者などを中心とする水平統合的なモノづくりへと、緩やかに変遷していくことが想定される。つまり、系列外企業にも参入余地ができるわけだ。
「大きな枠組みが変わろうとしている現在の状況は、当社のような独立系企業にとってはチャンス」(日本精工で自動車軸受けの開発を率いる満江直樹・執行役常務)と、独立系メーカーも期待を寄せる。同社はモーターの高速回転にも耐えうる軸受けなどを開発し、EVやHEVの本格化をにらむ。
一方、ガソリン車も従来油圧機構だった部品の電動化が進んでいることから、今や1台に100個以上のモーターが搭載されている。HEVの場合は電子部品の使用が増えるため、搭載数もさらに拡大。EV化の流れはまさに追い風なのである。
EV駆動モーターも開発 中国メーカーを開拓か
EV市場での躍進をもくろむ日本電産の強みは、大きく三つある。
一つ目は「ブラシレスモーター」だ。ICで電流制御する同モーターは小型化や効率化、低ノイズ化などに優れ、情報機器分野などで展開する日本電産が60%もの世界シェアを占める。現在、車載用の主流はブラシ付きだが、「緻密な電子制御が求められるエコカーの拡大に伴って、今後はブラシレスに置き換わっていくだろう」と部品メーカー幹部は話す。