バイデン就任演説から見えた5大注目ポイント 結束を訴え、実行することが何より求められる
冒頭で述べたとおり、バイデン大統領の就任演説は、前回記事で示した7大ポイントについて、ほぼ予測どおりの内容となりました。もっとも、ここで重要なのは、就任演説予測がほぼ予測どおりだったということではなく、バイデン大統領やその就任演説の予測可能性が高かったということなのです。そして、この点がバイデン政権の今後を占う上でも最重要ポイントの1つになると考えられます。
実際に、バイデン政権が予測可能性の高い運営になっていくことは、同政権の特徴であり、また長所にも短所にもなり得るものだと思います。
長所としては、コロナ禍、デジタル化の進展、脱炭素社会など、環境が激変している中で、政権運営の予測可能性が高いことは、政策を確実に実行していくうえではプラスに働くことが期待されます。それは、予測可能性が高いことは制度やシステムの円滑な運用において重要であるからです。
一方で、予測可能性が高いことは、交渉戦略上は大きな短所として作用します。親トランプの過激派筋やテロ組織等には攻撃の材料を提供しやすいことを意味するのです。もっとも、オーソドックスで正義をもって事に当たろうとしているバイデン大統領は、後者のデメリットを熟知しながらも、自らの価値観とともに正々堂々として言動を続けてくるのではないかと考えられます。
分断の危機に対する団結を優先して訴えた
前回の記事において、筆者は、米議会3誌の1つであるThe Hillの記事の中から、「バイデンの就任演説は、リンカーンの高潔な理想主義とルーズベルトの明確な実利主義を組み合わせる必要がある」という指摘を紹介し、バイデン大統領が就任演説で提示していくべき内容についても考察しました。
南北戦争の最中においてアメリカが最大の分断の危機を迎えていたのに対して団結を訴え実行していったリンカーン大統領。バイデン大統領の就任演説は前者の部分に大きなウエイトを割き、全国民の一致団結を訴えたわけです。
その一方で、ルーズベルト大統領の就任演説については、大恐慌の最中にアメリカが置かれた状況をありのままに評価し、問題解決への政策を指し示すことで国民が持っていた恐怖を和らげたと評価されてきましたが、その「ルーズベルトの実利主義」部分について、バイデン大統領は自らの演説では期待されていたことを実行できずに終わったというのが率直なところではないかと思います。
これは、やはりアメリカが南北戦争以来とも言える危機的な分断の状況にあるなかで、結束を訴えるための「リンカーンの理想主義」部分を優先せざるを得なかったからではないかと考えられます。もっとも、ここは、バイデン大統領自身が、「必ずできるという可能性ある世界観」の提示を就任演説の大きなテーマに選んだなかで、実利主義的部分を示すことで同世界観が映えることになったのではないかと思っています。
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