バイデン就任演説から見えた5大注目ポイント 結束を訴え、実行することが何より求められる

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このように、「結束×必ずできるという可能性ある世界観」を最大テーマとして、「リンカーンの理想主義」的ストーリー展開となったバイデン大統領の就任演説ですが、バイデン政権がこれからすぐに対峙していかなければならない「現実の世界」には、本当に大きな課題が山積みになっています。

1月6日の連邦議会議事堂への乱入事件を受けてトランプ前大統領への弾劾の動きが民主党内で加速した中で、バイデン大統領が弾劾自体に静観してきたのは、就任演説で全国民に結束を訴え、それを実行することが求められていることを誰よりも理解していたからに他なりません。

民主党側では、トランプ前大統領を二度の弾劾に追い込むことは、その政治生命を絶ち、4年後の大統領就任可能性を排除しておきたいという思惑が大きいものと指摘されています。もっとも、新政権誕生後の重要なタイミングで弾劾の手続きを進めていくことは、すでにある巨大な分断をさらに拡大させ、新政権の重要施策実行を遅らせる可能性もある諸刃の剣ではないでしょうか。

南部7州がアメリカ合衆国を脱退したことで始まった南北戦争ですが、トランプ大統領がバイデン大統領就任式の当日に同式には参加せずフロリダに移り、支持者から熱烈な歓迎を受けたことは、当然にトランプ大統領の戦略の一環だったのではないかと分析されます。

トランプファミリーが次期リーダー候補となるかも

トランプ前大統領自身が仮に法的な要因等で次の大統領選挙に出馬しなかったとしても、トランプ支持層はトランプファミリーの中から自らの次期リーダーを担ぎ出す可能性も高いのではないかと思います。

実際に、議会3誌の1つであるPOLITICOにおいては、1月15日付の「イヴァンカの政治的将来が大きな焦点になっている(Ivanka’s political future comes into sharper focus)」という記事において、トランプ前大統領の資金的な支援者たちが同氏の長女であるイヴァンカ・トランプ氏に政界入りを強く望んでいること、さらにはトランプ前大統領のシニアアドバイザーだったジェイソン・ミラー氏が「イヴァンカは政治的に強力な存在である」(Ivanka is a political powerhouse)と述べたことなどが紹介されています。

バイデン大統領が就任演説で述べたとおり、「意見の相違は必ずある」「意見が違うのが民主主義」だと思います。だからこそ、バイデン大統領には、相手側の意見にも耳を傾け、実直に対話を続けていくことこそが求められているのではないかと思います。そこまで踏み込んでやっていくことで、バイデン大統領が就任演説の冒頭で述べた「今日は民主主義の日」が真に到来するのではないかと期待しているのです。

田中 道昭 立教大学ビジネススクール教授

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たなか みちあき / Michiaki Tanaka

シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業戦略&マーケティング戦略およびミッション・マネジメント&リーダーシップ。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)などを経て、現在は株式会社マージングポイント代表取締役社長。主な著書に『「ミッション」は武器になる』(NHK出版新書)、『アマゾンが描く2022年の世界』(PHPビジネス新書)、『GAFA×BATH 米中メガテック企業の競争戦略』(日本経済新聞出版社)など。

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