株価が高い! マーケットを語る本欄にあって、株価に触れないわけにはいくまい。
「米史上最高値と日経平均29年ぶり」の意味
11月16日、ニューヨークダウは終値で2万9950ドルと3万ドルにあと50ドルまで迫り、史上最高値を更新した。
日経平均株価も17日には2万6000円台に乗せて引けた。こちらは、29年ぶりだという。2万5000円の際にも29年ぶりと報じられたが、こんなに長い間、この下の株価でビジネスをしていたのかと思うと、証券マンとしては涙が出る思いになる。「史上最高値更新」と「29年ぶり」の彼我のギャップに愕然とせざるを得ない。
しかし、感傷は脇に置くとして、株価が上昇していることは間違いない。
株高にアメリカの大統領選挙は関係なさそうだ。ドナルド・トランプ大統領優勢の報道の日も、ジョー・バイデン候補勝勢の報道の際にも、株価は上がった。「節操がない」とも言えるが、株価は別の要因で「上がりたかった」のだろう。
本欄の前回「『株のバブル崩壊が近い』と言える4つの理由」の執筆者であるオバゼキ先生(小幡績・慶応義塾大学大学院准教授)は、今の株価を「バブルだ」と喝破された。筆者もこの株価上昇の構造が「バブル的」であることに同意する。しかし、他方でこれが真性のバブルなのだとすると、「バブルは、この程度で収まるような生やさしいものではない」とも思う。本稿では、その辺りの事情を説明したい。
なお、株価上昇の一因として、大統領選挙終了による不確実性の解消を語る向きもあるが、これは違っていそうに思う。バイデン氏の僅差の当選と上下両院での民主党の意外な不振で、同氏の政権基盤は極めて弱そうだ。彼は共和党のほかに党内左派の不満にも対処しなければならない。
今のところ顕在化していないが、民主党左派の不満と、「トランプ的な共和党の支持者」の間には、意外に共通の利害があるように思われる。端的に言って「反エリート」だ。目下、「左右」の対立が「上下」の対立を覆い隠しているが、「バイデン次期政権」は民主党左派に造反されると思ったように政策が実行できない弱みを抱えている。
それでは、株価が上昇した理由は何か?
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