須賀:世界経済フォーラムでも、グローバルに影響力のある日本人について話をすると、緒方貞子さんの名前が頻繁に挙げられます。中満さんも緒方さんもご自身が若いときから、グローバルの舞台でアクティブにご活動され、さまざまなご活躍をされてきたと思いますが、どういった点が評価されてきたポイントだとお感じになられますか?
「官僚になってしまってはダメよ」
中満:やはりいちばんは官僚的な考え方をしないことだと思います。緒方さんからは、自由に考え、しがらみや前例にとらわれずに全体的な状況を把握し、戦略を立てることの大切さを学びました。
緒方さんは自分が外務省の官僚ではなく、学者だったからそれができたのだとおっしゃっていましたね。官僚機構は効率的に物事を回そうとはしますが、クリエーティブにアイデアを出そうとする組織ではないからです。だから、私にも、「泉さん、官僚になってしまってはダメよ」と繰り返し話していたことをよく覚えています。
須賀:私も官僚出身の人間ですので、そのことを強く自覚しています。最後に、中満さんを突き動かすものについて伺わせてください。中満さんがそこまでの当事者意識を持って、紛争地域で問題解決に取り組まれたモチベーションは何だったのでしょうか?
中満:モチベーションは少しずつできていったのだと思います。私は帰国子女でもなく、パスポートを取ったのも21才になってからなんです。若い頃から現場に出て、非常に悲惨な出来事や人間の醜い部分、恐ろしさをまざまざと見せつけられて、落ち込んだり、怒りを感じたりしたこともありましたが、それ以上に人間は言葉や文化など目に見える違いよりも何か共通のものがあるように思えたんです。
若くて心の柔らかい時期に、そうした人間のすばらしい部分を現場で経験できたことが今でも大きなモチベーションになっています。人間の価値はお金持ちだとか、地位があるとかそういったことではなく、まったく違うところにあるということを心底感じられる経験ができたんです。そういった経験ができたことによって、人間としても謙虚になれたと思います。
須賀:大変勉強になります。本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。
(制作協力:黒鳥社)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら