中満:日本は国としてますます内向きになり、世界で起きている問題に対しても関心が薄くなっています。国際舞台できちんとコミュニケーションを取れる人材を育てていかなくてはならないですし、とにかく多様性をプラスと捉える人がもっと増えなくてはなりません。日本は多様性そのものを脅威として捉える傾向がありますが、それは21世紀の世界では大勢と逆方向に向かうことです。私たちは多様性の中から力が生まれてくることをもっと意識しなくてはなりません。
須賀:種の生存のロジックもそうですよね。多様性がなくては生き延びることができません。
日本が国際社会で果たすべき役割
中満:日本という国の生存戦略について考えるとするならば、個人的には、信頼されるミドルパワーになることが重要だと思っています。
須賀:なるほど。そこでぜひお伺いしたいのが、国際社会からの日本に対する期待と、日本国内での議論のギャップです。国際社会からは、日本にもっと責任を果たしてほしい、相いれない勢力を同じテーブルに着かせるために重要な役割を果たしてほしいという期待や信頼を強く感じるのですが、国内の方々はそのことにあまり興味がなく、国際社会から求められる役割に対してリソースを投入しようとしないズレがあります。中満さんもそのようなご経験をされてきましたか?
中満:そうですね。そのようなギャップは非常に大きいと感じています。国際社会からの期待値と、日本が本来果たさなくてはならない、いい意味での責任の間にはギャップがあるように感じます。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックについて日本政府は、グローバルな課題として国際協力なしでは解決できないことやマルチ主義の立場に立って問題に取り組む意思を最初からはっきりと表明していました。
ただ、その意思表明に対する国内の反応は、そんなことをやっている暇があったら国内の問題に取り組むべき、といったものが多かったように感じました。私たち国連としても責任を痛感しており、日本が国際社会と連携して取り組むことがなぜ必要なのかをきちんと説明するために、日本への広報戦略やコミュニケーション戦略を見直しているところです。
国民全体の理解を深めることや、きちんとした対話を行うことが重要だと思いますが、メディアの責任は非常に大きいと思います。国際社会で重要な役割を果たすことが日本にとってどのようなプラスがあるのかという報道がほとんどありません。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら