日本人は「日本モデル」の不合理をわかってない 国連の中満泉さんが語る「国際社会での生存戦略」

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中満泉(なかみつ・いずみ)/国際連合軍縮担当事務次長・上級代表。アメリカ・ジョージタウン大学大学院修士課程(国際関係論)修了後、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に入所。UNHCRでは、ユーゴスラビアサラエボ・モスタル事務所長、旧ユーゴスラビア国連事務総長特別代表上級補佐官、UNHCR副高等弁務官特別補佐官などを務める。2012年から2014年まで国際連合平和維持活動(PKO)局政策・評価・訓練部部長、同アジア・中東部部長などを歴任。2014年からは国連開発計画(UNDP)の危機対応ユニット・事務次官補を務め、2017年より国際連合軍縮担当事務次長・上級代表に就任(撮影:Simon Forbes Keough)

中満:須賀さんがおっしゃるとおり、マルチステークホルダーで新しい規範を作っていく必要性を私たちも痛感しています。サイバー安全保障の分野ではすでにそのような議論がスタートしており、一昨年の12月には国連加盟国の代表者と民間企業や技術者たちによる団体など、およそ100を超える民間団体が国連に一同に介して議論しました。

これは私たちにとってはじめての試みでしたが、加盟国政府の代表者にとっては非常にインパクトがあったと思います。いかに自分たちの議論が現実の科学技術の進展のスピードから遅れているかということが見せつけられたと思いますし、企業の側からも今後世界で話し合うべきアジェンダが提示され、非常に面白い取り組みができました。

国連は加盟国から成り立つ組織で、各国政府の代表者によってさまざまな議論や交渉が行われる場でありますが、私たちが理解しなくてはならないのは、最もハードな国際法や条約だけではなく、その下のレイヤーに位置づけられる政治的な合意や特定の行動に対するコミットメント、民間企業が作る業界のスタンダードや行動規範が非常に重要な要素であるということです。これらのルールや規範が全体としてうまく組み合わさり、補完し合うことで国際社会の約束事が進展されていくと思います。

巨大な官僚機構で活躍している秘訣は?

須賀:国同士の合意形成が困難になる一方で、国際機関が社会課題のアジェンダを立てることによって、課題に対する認知を広げるイシューアウェアネスの重要性も感じています。次に、国際機関での働き方についてもお話を聞かせてください。組織としては巨大な官僚機構となっている国際機関で、当初持っていた思いや志を持ち続けながら、ご活躍されている秘訣はどこにあるのでしょうか?

中満:まずは、こういった世界が好きだということが重要なポイントだと思います。私にとって国連はツールの1つであり、国連に命を捧げるといった思いはありません。

現代では、グローバルに広がる問題、課題に対して、一国の視点だけで解決することは不可能です。グローバルに広がる複雑な問題に対しては、多様な視点を持ち寄って、どこに共通項があるのかを見いだし、その共通項から合意点や解決策を探していくことが重要で、それは国際機関がなければできないことだと強く思っています。

須賀: 国際機関でなければできませんね。

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