中満:須賀さんがおっしゃるとおり、マルチステークホルダーで新しい規範を作っていく必要性を私たちも痛感しています。サイバー安全保障の分野ではすでにそのような議論がスタートしており、一昨年の12月には国連加盟国の代表者と民間企業や技術者たちによる団体など、およそ100を超える民間団体が国連に一同に介して議論しました。
これは私たちにとってはじめての試みでしたが、加盟国政府の代表者にとっては非常にインパクトがあったと思います。いかに自分たちの議論が現実の科学技術の進展のスピードから遅れているかということが見せつけられたと思いますし、企業の側からも今後世界で話し合うべきアジェンダが提示され、非常に面白い取り組みができました。
国連は加盟国から成り立つ組織で、各国政府の代表者によってさまざまな議論や交渉が行われる場でありますが、私たちが理解しなくてはならないのは、最もハードな国際法や条約だけではなく、その下のレイヤーに位置づけられる政治的な合意や特定の行動に対するコミットメント、民間企業が作る業界のスタンダードや行動規範が非常に重要な要素であるということです。これらのルールや規範が全体としてうまく組み合わさり、補完し合うことで国際社会の約束事が進展されていくと思います。
巨大な官僚機構で活躍している秘訣は?
須賀:国同士の合意形成が困難になる一方で、国際機関が社会課題のアジェンダを立てることによって、課題に対する認知を広げるイシューアウェアネスの重要性も感じています。次に、国際機関での働き方についてもお話を聞かせてください。組織としては巨大な官僚機構となっている国際機関で、当初持っていた思いや志を持ち続けながら、ご活躍されている秘訣はどこにあるのでしょうか?
中満:まずは、こういった世界が好きだということが重要なポイントだと思います。私にとって国連はツールの1つであり、国連に命を捧げるといった思いはありません。
現代では、グローバルに広がる問題、課題に対して、一国の視点だけで解決することは不可能です。グローバルに広がる複雑な問題に対しては、多様な視点を持ち寄って、どこに共通項があるのかを見いだし、その共通項から合意点や解決策を探していくことが重要で、それは国際機関がなければできないことだと強く思っています。
須賀: 国際機関でなければできませんね。
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