国家機密暴露した「スクープ」の意外な舞台裏 記者が「ペンタゴン・ペーパーズ」入手した経緯

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シーハンは、その意味をこう考えることにした。これでニューヨーク・タイムズはいつでも記事を掲載できるようになったということを、エルズバーグは理解した──。

「エルズバーグが私に話したことを覚えていれば、という話にはなるが、これはシグナルを送るために行ったことだ」とシーハンは言った。「偽善と言われればそれまでだが、記事掲載が決まった以上、何らかの形で彼に注意喚起しておきたかった」。

しかし、エルズバーグには合図の意味が伝わっていなかった。

エルズバーグは、マンハッタンにある家族のアパートで保管していた秘密文書の全文コピーをシーハンが受け取る手はずを整えた。シーハンは、アパートのドアマンに多額のチップを握らせたのを覚えている。誰かから何かを聞かれても「『さぁ、あっしには何のことだか』と言わせるのに十分な額をたんまりとはずんだ。遅かれ早かれFBIが何かを嗅ぎつけて、捜査に乗り出すことはわかっていたからね」。

晩年のシーハン記者 。2020年1月、自宅の庭にて(写真:Brendan Hoffman/The New York Times)

エルズバーグが「真実」を知ったのは

シーハンは痕跡を隠すために、土壇場になってからも、さらに別の対策を重ねた。シーハンの自宅で保管していたコピーは同僚の家の冷蔵庫に移された。エルズバーグのイニシャルが記されたページはニュージャージー州に出かけてドロドロに溶かすか、シーハンの義父の友人だったブラジル外交官宅のバーベキューセットで焼却した。

結局、エルズバーグは記事掲載のタイミングに意表を突かれることになった。シーハンがようやくエルズバーグ宅に電話を折り返したときには、エルズバーグの妻としか話をすることができなくなっていた。シーハンは、エルズバーグの妻からこう伝えられたという。夫は報道の内容には満足している、でも、あなたの「とてつもない二枚舌には納得していない」。

その後半年間、2人が接触することはなかった。シーハンによれば、マンハッタンでエルズバーグとばったり出くわしたのは、1971年のクリスマス前だった。2人の間で交わされる、つかの間の会話。その中で、シーハンは事の真相を伝えたという。

エルズバーグは言った。「つまり、君は盗んだわけだ。私がやったみたいに」。

「違うな、ダン。私は盗んではいないぞ」。シーハンは答えた。「それに君だって盗んではいない。あの文書はアメリカ国民の所有物なんだからな。国民の財産と(戦地で流された)血が代償になっているんだ。国民の手に取り戻して何が悪い」。 =敬称略=

(執筆:Janny Scott記者)
(C)2020 The New York Time News Services

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