この第3波で感染拡大を収束できない都道府県の知事らは、休業や時短要請の実効性を担保するための強制力を持たせた特措法の改正を求めてきた。だが、政府は当初、私権を制限しかねない罰則規定には慎重だった。
ところが、年末にかけて政府は方針を転換した。予想をはるかに超える感染の実態を収束する目途が立たない知事からの要望や、医師会からの後押しもあった。後手に回った対策で批判される政府としては、その意をくむ選択肢しかなかったのかもしれない。
いま政府内では、飲食店への協力金などの支援策とセットで、罰則規定を盛り込む検討が大詰めを迎えている。それだけではない。医師や保健所の入院要請に従わない人や、疫学調査を拒否した人に対する罰則規定を盛り込む方針も示された。
昨年10月13日付の朝日新聞デジタルで、科学ジャーナリズム論が専門の早稲田大学大学院の田中幹人准教授が、こう問いかけている。
「特定の業種や地域の人々をひとくくりに呼ぶ『ラベリング』は、社会にすばやく浸透する一方、業界で働く人への差別を引き起こす温床になりはしなかったか」(コロナ禍の日本と政治 「ラベリング」、差別を引き起こさないか 単純化、あらがう社会を 田中幹人さん 朝日新聞デジタル 2020年10月13日配信)
差別を正当化する方向で浸透
そのうえで、こう分析する。
「有効な防止策を学ぶチャンスを逃しただけでなく、差別を正当化する方向で浸透してしまった」
政府が躊躇してきた「私権の制限」という高いハードルをひとたび越えてしまえば、次のハードルは、より低くなる。欧州のロックダウンのように、外出制限に従わない場合は罰金が科せられるかもしれない。韓国のようにGPS機能で国民が管理されるかもしれない。市民生活が抑圧されることは、ありえない話ではない。
NHKの世論調査では、感染症対策で個人の自由を制限することに、86%が「許される」と回答している。つまり感染症と闘ううえで、やむをえない措置と多くの人は考えているようだ。
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