大学間格差が小さい「ドイツの大学」の深刻事情 日本やアメリカの大学にも大きな影響を与えた

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たとえば、当時も今も、ヨーロッパの大学は伝統として法学、神学、医学を中心科目にしてきた。しかしフンボルト大学では医学は当然として、数学、物理、化学、文学といった学問を重視して、それらの学問の発展へと大いに尽くしたことで、研究大学としての名声を高めたのである。哲学者のフィヒテ、ヘーゲル、医学者のコッホなど、実際に多数の優れた学者を輩出した。

この名声に憧れて、日本からも森鴎外、北里柴三郎、寺田寅彦といった有名な学者が留学している。そして研究中心の大学や大学院教育を重視する姿は「フンボルト精神」として大学界において名声を博し、これが日本やアメリカの大学へ大きな影響を与えていった。

ところが第二次世界大戦後、フンボルト大学は旧東ドイツに属することになり、影が薄くなっていく。西側のベルリンにベルリン自由大学が設立されたことも影響があるだろう。1990年にドイツ再統一が実現したことでフンボルト大学は再び首都の大学となり、ようやく地位を回復することになる。

格差が小さいドイツの大学

なおドイツの大学の経営は主として州の財政で賄われる。そのため、ほとんどを州立大学とみなすことができるだろう。

ドイツは連邦国家なので、結局は国立大学とみなす考え方もあるが、個々の大学運営は州政府の管理下にあるために公立大学であり、現在でも学費はほぼ無料だ。その一方で、私立大学の存在感が小さいことがドイツのもう1つの特色でもある。

そうした環境下にあるためか、ドイツでは、大学間の格差があまり見られない。個々の大学が固有の入試を課さないため、自分が生まれ育った州の大学に進学するのがあたり前で、入学してくる学生の質にも大学間で大きな差が生じないのである。

また、どこの大学を卒業したかという出身大学名がキャリアに有利に働いたり、逆に不利に働いたりといった影響もあまりない。ドイツが英仏米日のような学歴社会にならなかった背景として、大学間格差が小さいことはあるだろう。

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