推しの誕生日を花火で祝う「オタ活」の新潮流 大手新聞の全面広告8面をジャックした事例も
「“オタク”の場合、グッズを集めるだけの人も含みますが、“ファンダム”は『自主的な行動をとる人たち』という意味合いになる。JO1の“JAM”は日本で、いま最も活発な動きをしているファンダム。BTSのファンダム“ARMY”のように、ファン同士で結束して推しメンの応援広告を出すなど、日本になかった活動を展開しています」(さやわかさん)
JAMの結束力の強さは本誌も目の当たりにした。AERA20年11月30日号でJO1が表紙を飾ったのは、JAMの後押しがきっかけの1つだった。表紙フォトグラファーの蜷川実花がツイッターで「撮影してほしい推し」を募集したところ、もっとも多く挙がった名前の1つがJO1だった。
JO1はサバイバルオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN」で約3カ月にわたる熾烈な競争を繰り広げ、番組視聴者の投票によって選ばれた11人で結成された。
今、さまざまなオーディション番組が動画配信サービスなどのコンテンツとして活況を呈している。テレビの地上波の番組なら全編は取り上げないようなオーディションの過程が、逐一ファンに伝わる。ファンたちは「できあがったもの」だけでなく、「育つ過程」の目撃者にもなれる。そのことがますますファン心理を掻き立て、ファンダムの大きな源泉の一つになっている。
得意分野を生かし合う
オーディション時からのJO1ファンである都内の30代会社員女性は、冒頭で紹介した、今ではJAMに定着している「メンバーの誕生日に花火」企画の発案者だ。花火鑑賞士でもある彼女は20年5月にツイートした。
「花束を贈る代わりに、誕生日に花火を打ち上げたらJAMのみんなで楽しめるんじゃないかなと。すぐに“いいね”が1千件も付いたので驚きました」
5月30日に18歳の誕生日を迎える最年少メンバー豆原一成さんへのお祝いとして、花火を打ち上げる企画が立ち上がった。中国など海外からの支援もあり、3日間で目標金額を達成した。この花火については、「めざましテレビ」や新聞が取り上げてニュースとなって広がった。
「自分たちの行動がきっかけでJO1の存在をたくさんの人に知ってもらえたことが嬉しい」
さらに、なんと豆原さん本人もYouTubeを見て、翌日インスタでコメントをくれた。かつては直接つながることなど考えられなかった、ファンとアーティストの関係が、SNSを通してどんどん近づいている。そう感じられることが、またファンダムを活性化させる。
この女性は言う。
「JAMはそれぞれが得意分野を生かして補い合っているんです。ミュージックビデオ(MV)のYouTube再生回数に応じて新たな映像を公開していく“MV再生回数達成公約”という企画の際には、日々必要な回数を分析してアナウンスしてくれる方がいました。忙しい人のために情報をまとめて発信してくれる方、応援広告を出すために働きかける方もいる。お金に余裕のある方はCDをたくさん購入してチャート1位を目指し、学生はMVを何度も視聴して再生回数を増やす……」