推しの誕生日を花火で祝う「オタ活」の新潮流 大手新聞の全面広告8面をジャックした事例も
真っ暗な湖面。満天の星。風はほとんどないが、頬が切れそうなほど寒い。2020年12月11日、午後7時すぎ。滋賀県の琵琶湖の湖畔で、三脚にiPhoneをセットし、2人は“そのとき”を待った。
「めっちゃ緊張してきた」
「すでに泣きそうだよ……」
7時30分、上空に約70発の花火が盛大に打ち上げられた。湖面に光が反射し幻想的な景色を作り出す。2人は、その映像を一瞬たりとも撮り逃すまいとYouTubeでライブ配信した。ツイッターには「すごくきれい!」「おめでとう!」などのメッセージが大量に飛び交った。
この日20歳になったグローバルボーイズグループ「JO1」のメンバー鶴房汐恩(つるぼうしおん)さんの誕生日と、同グループの結成1周年を祝うために有志のファンが企画した。SNSでつながった鶴房さんのファンを中心に数百人が費用を出し合い、花火師にJO1の楽曲「Starlight」をイメージした打ち上げ花火を依頼。ファンはそれぞれの居場所から、鶴房さんの出身地、滋賀県の夜空を彩った花火の映像をオンラインで楽しんだ。
SNSでつながり新たなムーブメントに
滋賀県在住の40代の女性と愛知県在住の40代の女性の2人が、1カ月ほど前に配信役を買って出た。2人はこの日のためにSNSで打ち合わせを重ねた。リアルタイム視聴者数は約1300人、アーカイブではさらに多くのファンが視聴する。2人は口をそろえる。
「無事に終わってとにかく安心しました。また来年も汐恩くんの誕生日を“JAM”のみんなと祝いたいです」
今、エンターテインメントの世界で“ファンダム”という言葉が注目されている。熱心なファンたちがSNSを使ってつながり合い、その“熱狂”がさまざまな形となって表れ、新たなムーブメントを作り出す。こんな動きがそこここに生まれている。2人が口にしたJAMはJO1のファンダムの名称だ。