第3波で慌てた組織はリスク管理ができてない 対処は重要だが予防こそ軽視してはならない

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将来の見通しを立てておけば不測の事態にも対応がしやすくなる(イラスト:Mandryna/iStock)

今年ほど、企業や個人、そして政府が危機に直面している年はないだろう。国内では昨年春以来2度目の緊急事態宣言が発令され、世界中も新型コロナウイルスによるパンデミックに直面している。その反動で、経済は大きく揺れ動き、かつての産業革命やルネサンス級の“地殻変動”が起こりつつある。人類が新型コロナウイルスと戦争していると考えたほうがいいのかもしれない。

こうした大きな変動に直面したとき、われわれはどうすればいいのか……。

大切なことはきちんと「リスク(危機)」に立ち向かい、正確に分析して、適切な対応策を取ることだ。

ところが、日本政府の対応や日々の人々の動きを見ていると、どうも世界とはズレているように思える。さまざまな危機に対する管理意識がなかなか理解されなかったり、ややもするとばかにされたりするような、そんな風潮さえ目立つ。

日本人の意識の底には、平和な日々を壊すような言動や行動を忌み嫌う風潮がある。福島原発事故やコロナ禍への対応を見ていると、日常的な危機管理がどうしてもおろそかになっているような気がしてならない。

これから迎えるだろうリスクを見ながら、企業や個人のリスクマネジメントの重要性について考える。

「リスク管理」と「危機管理」は違う

日本で意外と勘違いされているのが、「リスク管理(Risk Management)」と「危機管理(Crisis Management)の違いだ。さまざまなリスクに対して、あらかじめリスクを認識して対応する体制を整えていくのが「リスク管理」の考え方であり、実際に危機が起こったときにどういう行動をすればよいのか、そして回復までのプロセスを考えるのが「危機管理」と言っていい。

最もわかりやすい言葉で表現すれば、リスク管理とは「予防」であり、危機管理は「対処」と考えればいい。

リスク管理は、組織を全体的に管理し、危機の損失がどの程度であるかを想定して、損失の軽減や回避を図るプロセスのこと。近年このリスク管理が、さまざまな形で求められていると言っていいだろう。想定されるリスクをすべて洗い出して、専門的なリスク管理の部署を作ることが求められている。

余裕のある大手企業に比べて、人的、資金的に余裕のない中小企業にも、リスク管理の重要性が叫ばれている。大きな負担になるかもしれないが、社長が自らリスク管理部門のトップになってリスクに対応するなど方法はいくらでもある。

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