第3波で慌てた組織はリスク管理ができてない 対処は重要だが予防こそ軽視してはならない

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一方、予防的措置であるリスク管理に対して、いま現実に目の前にあるリスクに対して、どう対応すればいいのか。われわれはいま現実に「危機管理」が求められている状況にいるわけだ。

具体的に、危機管理の方法には大きく分けて「移転」と「保有」があるとされる。もうひとつ「回避」という方法もあるが、パンデミックには通用しないだろう。

移転とは、保険などをかけておくことで損失発生時に第三者から損失補填を受ける方法。保有はリスクの存在を意識しながら、あらかじめ内部留保や貯蓄によって損失発生時に、損失を自己負担でカバーしていく方法だ。

個人ベースで言えば、「移転」は生命保険や医療保険、火災保険に入る方法である。あるいは副業やバイトなどを通して収入を得る手段もある。

「保有」とは月々の貯蓄などを通して、いざというときに備える手段。収入が大幅に減少したり、ボーナスが大きくカットされたりした場合、生き残るためのすべとなる。飲食店などを経営する個人事業主も、ある程度の蓄えがあれば、危機管理はできると考えていい。

とはいえ、今回のパンデミックではそんな準備をする間もなく、第3波の緊急事態宣言が出されるなど、想定外のものが多かった。

結局、貯蓄などの蓄えがなければ、借金などによる「移転」でしのぐしかない。ただし、慌てて借金をした段階で、リスク管理は失敗だったと言っていいのかもしれない。いざというときに、資金繰りが逼迫するのは当然のことだが、問題はその準備ができていたかどうかだ。緊急事態宣言が解除されたら、その瞬間から次の緊急事態宣言の準備に取り掛かるぐらいの行動力が必要だ。

パンデミックは一過性のリスクにあらず!

いずれにしても、新型コロナウイルスによるパンデミックは、もはや一過性のものではない。そういう意味では、「自然災害」や「地政学リスク」「金融リスク」「サイバーリスク」といったすでにあるリスクと同列に考えて、対応に全力を尽くす必要がある。

とはいえ、今回のようなパンデミックへの対応は、リスクマネジメントのプロでも難しいと言われる。将来的な見通しが不透明すぎるために、リスク管理に不可欠な将来への予測が立てにくいからだ。

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