とはいえ、パンデミックがもたらすリスクは、きちんと認識しておく必要があるだろう。菅首相が、緊急事態宣言の延長、拡大の可能性を聞かれて「仮定のことは考えない」と答えたが、仮定のことを考えるのが「リスク管理」の基本だ。簡単に洗い出してみると、次のようになる。
パンデミックがもたらす11のリスク
感染の当事者にならなくても、同業者や隣接する企業などの感染クラスター発生によるリスク。風評被害も含めたリスクに対応する必要がある。
企業の従業員や顧客に感染者が出た場合のリスク。いま、最も可能性の高い、極めてノーマルなリスクだが、実際にどんな事態になるのかは、その地域の感染状況や医療体制によって異なる。不透明な部分が多い。
パンデミックの影響で企業倒産、失業者増加などが表面化してくれば、景気後退が急速に加速する可能性がある。ただ現在の企業倒産件数は、減少の一途をたどっており、政府や自治体、銀行などの支援によって生き延びている現象が多く見られる。東京商工リサーチの調べでも、2020年10月の企業倒産件数は、この50年間でバブル絶頂期だった1989年に次いで、過去2番目に低い水準だった。2020年1〜12月の年間で見ても、30年ぶりの低さだったそうだ。とはいえ、2回目の緊急事態宣言などによって、政府や自治体による支援や銀行融資も、息切れ感が出てきている。
新型コロナウイルスの変異種などの増加で、国際的な交流が止まりつつあり、加えて国内の人や物の流れが影響を受けている。業界を問わず経営資源そのものが枯渇するリスクが出てくる。大口顧客の倒産、原材料の入手困難など、あらゆる経営資源に関わるリスクを見直してみる必要がある。
中央銀行によるゼロ金利政策や量的緩和が強化され、市中に出回るお金の量が増えてバブルが発生。異常な株高などはそうそういつまでも続かない。必ずバブルが崩壊するときがやってくる。そのときのリスク管理が必要。
1カ月間、緊急事態宣言が出た場合、GDP(国内総生産)は1兆~3兆円のマイナスになると言われている。景気の悪化は消費を抑制し、売り上げや利益減少につながる。
景気悪化によって税収が減少し、量的緩和による財政出動は将来的な財政破綻リスクを膨らませる。金利上昇懸念も大きなリスクとなる。すでにアメリカの長期金利は年1%を超えて上昇を続けている。
景気の悪化はデフレを招く。デフレをリスクととらえて、対応していく必要がある。
財政赤字の結果として、インフレに陥ることが歴史的にしばしば見られた。インフレに対するリスク管理も重要だ。
例えば、日本では2022年の春ごろにはコロナ禍から回復の見通しと言われているが、変異種の蔓延、感染拡大によって将来が見通せなくなる可能性が高い。
経済に与える影響というよりも、政府に近い企業であればあるほど、その影響度が増してくる。また、財政的な負担も大きいはずだ。
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