上野千鶴子先生、東大女子は幸せですか? 力尽きるまで、働くしかできない女たち

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企業は、男と同じ条件の下で競争というゲームに入っていく総合職の女性を少しずつ増やす一方で、「結婚までの腰掛け」として採用されていた一般職の採用枠を減らし、彼女らを派遣社員という非正規雇用に切り替えました。

その結果、拡大したのが女女格差です。一握りの総合職が生まれる一方で、大多数の女性の貧困化が進みました。だから、85年を「女性の貧困元年」と呼ぶ人もいます。

こんな二択に、誰がした?

その非正規雇用者は今や、最近のデータによると、日本の全雇用者の3分の1。うち7割を女性が占める結果となりました。さらに、女性労働者のうち、非正規雇用は58%に上ります。

また、非正規雇用者といえば、20年ほど前までは、中高年の既婚女性のいわゆる「パートさん」が多かったのですが、最近では、新卒女子も最初から非正規雇用に入っていきます。

今年は新卒者の内定率がよく、女子学生も内定率は7割、8割と言っていますが、実はその5割以上が非正規雇用なのです。

これを、「雇用の崩壊」と言わずして何と呼ぶでしょうか。

女性運動は、長きにわたって「私たちは働きたい」、だから働かせろと、企業や政府に要求してきました。でも、私たちが要求した働き方は、こんな働き方だったのでしょうか?

ぶっ倒れるまで働かされる総合職か、割に合わない仕事をさせられ食うに食えない非正規かの二択しかない――そんな働き方を誰が望んだというのでしょう。

安倍政権は、2020年までに社会のあらゆる分野において、指導的地位に占める女性の割合を 30%程度まで引き上げるなど、女性の活用を推進するとか言っていますが、私には、女性の使い捨てをますます推進しているとしか見えません。

こんなに女性が生きにくい世の中に、いったい誰がしたのでしょうか?

昔は、「オヤジが悪い」と言っていればよかった。でも、私も今や高齢者になり、人生の3分の2はゆうに過ぎました。そうなったら、「オヤジのせい」とだけはもはや言えません。こんな世の中を若い女の人たちに手渡してしまうことに対して、申し開きはできない。

私なりに、こんな世の中では女性が安心して子どもを産めないと、闘ってはきました。でも、あまりに微力で力が及ばず、世の中が困った方向に進むのを止められませんでした。

ですから、みなさんに、ごめんなさいと謝りたい。

そんなせめてもの償いの意味も込めて、皆さんのどんなお悩みやご質問にも精いっぱいお答えさせていただきたいと思います。

(次回に続く。次回記事は6月20日公開予定です)

佐藤 留美 ライター
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