この時期地味に人気「ガレット・デ・ロワ」の魅力 1月に食べるフランス菓子の知られざる貢献
毎年この時期になると、さまざまな洋菓子店やパン屋に並びながら、日本で今ひとつブレイクしきっていない洋菓子がある。フランスの伝統洋菓子「ガレット・デ・ロワ」。「王様の菓子」という意味のアーモンドクリームを挟んだシンプルなパイ菓子は、フランスで1月6日のエピファニー(公現節)を祝うのに欠かせない菓子である。
この日は、東方の3人の博士が贈り物を持ってベツレヘムを訪れ、キリストに贈り物を捧げた日とされる。6日あるいは1月中のある日、フランスでは家族や友人たちが集まり、キリスト誕生が公になった日を祝う。ガレット・デ・ロワの中には、「フェーブ」と呼ばれる陶器の小さな人形が1つ仕込まれている。切り分けた際にフェーブが当たった人は、その日「王様」または「王妃様」役となる。
日本ではなぜか派手に取り上げられることはないが、”地味”ながらそのファンは多い。東京・西馬込の洋菓子店「メゾン・ド・プティ・フール」オーナーシェフの西野之朗氏によると、1990年の開業当時からガレット・デ・ロワを売る同店では、毎年の発売を楽しみにし、店に「まだか」と連絡してくる常連客までいる。
1月中旬頃までの販売期間に、毎年合わせて300~400個が売れ、予約でかなりの部分が埋まるという。「家族が揃っている三が日のうちに食べたい、というお客さんは多いです」と西野氏は話す。今年は18センチのホールケーキでプレーンが2808円(税込)、アンズ入りが2916円(同)、栗入りが3240円(同)。プレーンは、アーモンド粉入りの生地にカスタード生地を加えたクリームを挟んだ、少しリッチな味わいのパイである。
宗教色の少ない日本で普及活動
日本では2000年前後に一大スイーツブームが訪れ、その後もさまざまなスイーツが世の中を席巻したが、ブーム後もパティシエたちは着実に技術を磨き続けており、日本の洋菓子技術は世界でも高く評価されるようになっている。こうした技術向上を密かに支えているのがガレット・デ・ロワと言っても決して過言ではない。
キリスト教信者が少ない日本では、クリスマスといえば美しい飾り付けを眺め、ケーキやプレゼントを大切な人や仲間と楽しむものに過ぎない。しかもその後に、もっと重要な伝統行事の正月が控えているため、12月25日を過ぎた途端一気に正月ムードに切り替わる。
そんな宗教色の少ない日本で、ガレット・デ・ロワとその楽しみ方を広めることに尽力してきたのが、クラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワである。メンバーは職人たちのシェフ会員95人のほか、食品企業36社、学校6校、そして菓子愛好家たち130人に上る。
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