この時期地味に人気「ガレット・デ・ロワ」の魅力 1月に食べるフランス菓子の知られざる貢献

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協会が発足したのは2003年。フランス修業の経験がある東京・麹町の名店「パティシエ・シマ」の島田進氏らが、「ガレット・デ・ロワを軸として、フランスの伝統菓子をきちんとした形で伝えようと集まりました。日本に入ってきた外国の菓子は、すぐにアレンジされて原型がわからなくなってしまうことが多いからです」と、前述の「メゾン・ド・プティ・フール」オーナーシェフで協会の会長も務める西野氏は言う。

2003年といえば、自由が丘スイーツフォレストができて長い行列が何カ月も続くなど、1990年代から始まったスイーツブームが頂点に達した年だ。振り返れば1990年代は、さまざまな洋菓子がはやっている。

ティラミスに始まり、チェリーパイ、エッグタルト、ベルギーワッフルなどのほか、カヌレ、クイニーアマンなどのフランスの伝統的な地方菓子も注目された。ムースやタルトを使った本格的なフランス菓子も、この時期に流行しやがて定着した。スポンジ生地を使わない、フランス本場流のモンブランもこの頃広まっている。

全国的な大ブームになったティラミスは、もともとイタリア料理のデザートだったが、洋菓子店でテイクアウトできるケーキになり、チョコやアイスその他さまざまなアレンジ商品が開発された。

洋菓子を作る基本技術が入っている

フランスで修業し現地のスイーツ文化を知るシェフたちも、そうしたさまざまなブームを見てきている。彼らが、正統なものをきちんと紹介し定着させたいと願う、ある意味で象徴的な菓子として選んだのが、ガレット・デ・ロワだったといえる。

「ガレット・デ・ロワは、洋菓子を作る基本技術が入っている意味でも大切」と西野氏は言う。それはまず、小麦粉を使った生地の間にバターを挟み、伸ばしては折りたたむ工程をくり返すことで層を作る折込パイ生地(フィユタージュ)を使うこと。それから、中にアーモンド生地(クレーム・ダマンド)を挟む。アーモンド生地は、タルトの土台によく使われる。西野氏の店のように、カスタード生地(クレーム・パティシエール)をアーモンド生地に混ぜる場合もある。カスタード生地も、シュークリームほかに使われる、基本の生地である。

基本の生地だけで作るガレット・デ・ロワは、シンプルなだけにごまかしがきかない。職人がきちんと技術を身に着けているかを確かめられる、スイーツともいえる。協会では2005年頃から勉強会や講習会を実施し、その頃から会員数も増加していった。

次ページ毎年11月には「ガレット・デ・ロワコンテスト」も
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