「ワクチン接種」で日本が検討すべき3つの課題 集団接種のノウハウを持たない自治体は大混乱

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1回接種の効果がいつまで続くかわからないという指摘もあるだろう。それでも、1回接種後に自然感染したとしても、重症化や死亡リスクが大幅に下がるなら十分な恩恵だ。無症状の場合も、そこで免疫がブーストされてワクチンの効果が長持ちする可能性がある(ブースター効果。体内で1度作られた免疫機能が、再び抗原に接触することで高まる現象)。

一刻も早く経済・社会を立て直し、時間のない中でパラ五輪開催を目指すなら、「まずは広く1回接種」というのも現実的な戦略ではないだろうか。

集団接種のノウハウを持たない自治体の混乱

2つ目は、ワクチンを配布された自治体が、いかにしてスムーズに集団接種を実施するのか。

この問題は実は、1つ目の「1回接種」の提案ともリンクする。それに気づいたのは、Twitterで保坂展人・世田谷区長のツイートを見ていたときだ。昨年12月29日、保坂区長は以下のように投稿している(原文ママ)。

集団接種の場合、自治体は接種者の紙情報をまとめて国保連にデータ入力、自治体に戻ってくるのは2カ月後だから、2度目の接種者が持送り、住民のクーポン券で視認する以外に1回目のワクチンの種類を確認する手段がない。クーポン券を紛失した場合は、どのワクチンを打ったのか本人の記憶頼みという。(中略)
厚生労働省は、ワクチンの輸入、超低温でのストックや物流等、、自治体に納入するまでの情報システムは組んでいる。しかし納品後に始まる「接種管理」の自治体実務に対しては「丸投げ」の状態。デジタル革命を語る国とは思えないアナログな仕組みを、情報管理は、すべての自治体がバラバラに対応する。

区独自のPCR検査実施など、コロナ対策における自治体首長としての手腕は誰もが知るところだろう。その保坂区長が、接種現場の混乱を訴えている。

新型コロナワクチンは、病院の近くにある体育館など大きな施設での集団接種が想定されている。ごく低頻度ながら、重いアレルギー反応(後述)も念頭に置いた会場設定が必要だ。接種後は30分会場に待機してもらい、重いアレルギー反応が起きたら速やかに応急処置しつつ、近くの病院に搬送する。

だが、日本では現在、自治体による集団予防接種は行われていない。小中学校でインフルエンザの集団接種が行われていたのは1987年まで、今から30年以上も前のことだ。集団接種の最後は2012年のポリオ生ワクチンで、対象者の中心は0歳児と、自治体人口のごく一部だった。

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