1つ目は、2回接種にこだわるべきかどうか。アメリカでは今、ワクチンの接種回数に関する議論がホットだ。臨床試験通りに「厳密に期間をあけて2回接種する方法」と、「まずは1回でもいいから早い段階で大勢に接種する方法」、どちらが感染者をより減らせるか? という議論である。
臨床試験では、モデルナとアストラゼネカは28日間隔、ファイザーは21日間隔で2回接種が実施され、有効性が立証された。だが実際のところ、1カ月弱の間に希望する国民全員が初回接種を終えられるとは思えない。
もし2回目接種のタイミングを徹底するならば、残る初回接種者は、医療関係者など優先接種者の2回目接種に劣後することになりかねない。あるいは、初回接種と2回目接種が同時進行することになれば、現場に混乱が生じるのは避けられない。
1回接種なら多くの国民が速やかに接種できる
それよりもむしろ、1回だけでも接種を行きわたらせてはどうか、というのがこの議論だ。
もちろん予防効果が十分に得られなければ意味がないが、その点も心配なさそうだ。
モデルナのワクチンは臨床試験で、1回目接種14日後から2回目接種14日後までの間(1回目のワクチンのみが効いている期間)に、ワクチン群2人、偽薬群54人が新型コロナを発病したとの報告がある。計算してみると、1回接種の有効性は54/56=96%だ。
同じく臨床試験(2回接種)では有効率95%だったファイザーのワクチンは、1回接種後12日目から、接種群とプラセボ(偽薬)群とで発症率に差が出て、その後は接種群での発症傾向に大きな変化は見られない。1回接種後、ワクチンが効き始めるまでに発病した人も含め、ワクチンの有効率はざっくり82%と報告されている。例えば100万人に2回接種したら95万人を救えるところ、とりあえず1回接種にすれば2倍の200万人に接種でき、164万人を救える計算となる。
もちろんいずれも1回接種の有効性を証明するための検証ではないので、厳密なことは言えない。しかし、1回だけの接種でも相当効いている可能性が示唆される。
ちなみに、アメリカ食品医薬品局(FDA)は「承認済みの投与スケジュールを順守する」と発表し、1回目接種を優先させることに否定的だ。だが、この議論はすで欧州に広がり、デンマークでは6週間、英国では12週間、それぞれ2回目の接種を遅らせることを決定。アイルランドやドイツも同様の動きを見せている。
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