全国民を対象とした集団接種など、いまだかつて誰も経験したことがない。国による自治体説明会が行われたのが昨年12月18日。そこでいきなり今年2月下旬には医療関係者への接種開始を指示されたところで、自治体が動けるはずがない。
右も左もわからない自治体の多くは、民間企業にさらに“丸投げ”するようだ。しかし、民間企業にもノウハウが蓄積されているわけではない。
全国の自治体で混乱は必至だ。情報の一元管理が進んでいない中、せめて1回接種として現場の負担を減らすのは、現実な方策に見える。
「100%安全であるべき」信仰への疑問
3つ目は、ワクチンに対する重度のアレルギー反応への不安解消だ。
海外の接種者に重度のアレルギー反応(アナフィラキシーショック)が出たとの報道に、安全性に不安を覚えた人は少なくないだろう。しかし、ワクチンによる重いアレルギーのリスクは、新型コロナ感染で重症化するリスクの比ではない。
アメリカ疾病対策センター(CDC)によれば、同国では1月4日までに456万3260人が接種を受け、重いアレルギー反応は12人(単純計算で0.0003%未満)、ワクチン接種による死者はいない。原因はポリエチレングリコールとも言われるが(アメリカ『Science』誌による)、いずれにしてもごく低頻度である。
アレルギー以外の副反応としては、ファイザー、モデルナ、いずれのワクチンでも、生活に支障が出る程度の頭痛や筋肉痛、倦怠感も報告されている。接種にあたって軽微~中程度の副反応は想定しておく必要がありそうだ。短期的な安全性の正式なデータも間もなく出てくるだろう。
他方、1月5日までに報告された我が国の累積感染者数は24万7960人で、入院治療等を要する人は771人(約0.31%)、死亡者は3655名となっている(1月6日厚生労働省発表)。これに加え、自粛要請が繰り返され、経済ダメージにより生活を奪われ、人生を悲観する人が続出する事態まで憂慮するならば、ワクチンをためらう理由はどこにもない。
ワクチン接種は健康な人が受けるものだ。だからつい「100%安全でなければならない」と思いたくなる。だが、残念ながらそれは間違った“信仰”だ。異物を体内に入れる以上、リスクを完全にゼロにすることはできない。妄信や過信をせず、新型コロナ感染リスクとの相談の中で、観察と検証を繰り返しつつ取り入れていくしかない。
そのことを国民に周知し、理解を得るためも、情報の公開と共有が徹底されるべきだろう。
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