努力が嫌い。努力でうまくいくことはない 為末大 元プロ陸上選手の好き嫌い(上)

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前向きに「諦める」ことから、自分らしい人生が開けてくる――。ネット上で炎上騒ぎを巻き起こした「走る哲学者」の最新作。

楠木:「努力しなきゃ……」と思うことは、だいたいが嫌いなことだったり、向いていないことだったり、やらなければいけない義務的なことだったりするわけでしょう。そんなことをやっていてもうまくいくはずがない。仕事である以上、人の役に立たなければいけないのですから、そうとううまくないといけない。うまくなるためには、もちろん努力投入が必要になる。ただ、それを本人が努力だと思ってない。好きなので、周囲からやめろと言われてもやり続けてしまう。はたからみればやたらと「努力」をしているのですが、本人にとっては「娯楽」。そのくらい好きじゃないとなかなかうまくならない。「好きこそ物の上手なれ」というのは、ビジネスでも通用する最強のロジックだと考えているのです。

為末:僕も、『諦める力』では、そのへんのことが言いたかったのですが、なかなか伝わっていないというのが実感です。

楠木:為末さんのツイッターを見たことがあるのですが、他の人のリツイートを読むと、誤解というか、「何言ってんだ」という人もいますよね。今日は、そのあたりの為末さんのお考えを、好き嫌いをお聞きすることで、確認できればと考えています。

元「読書部」。考えることが好き。

楠木:為末さんは、陸上400メートルハードルの日本記録保持者で、世界選手権の2大会で同競技の銅メダルを獲得されています。また、オリンピックにも3回出場されている。ま、この辺については、僕よりも一般の方々のほうが詳しいと思います。申し訳ありませんが、スポーツにはまったく関心がないもので、新聞記事を見る程度です……。現在は現役を引退されているわけですが、どんなことをされているのですか?

為末:3つほどありまして、ひとつ目は子どもたちに「かけっこ」を教えています。これは教育に近いことです。2つ目は、引退したアスリートたちの、引退後の人生、つまりセカンドキャリアを支援すること。3つ目は、これから本格化させたいと考えているのですが、競技をやっていた頃から興味があった認知心理学を、本格的に勉強していきたいと思っています。

楠木:著作やインタビュー、ツイッターでのコメントなどを拝見していると、「考えること」がわりとお好きですね。

為末:考えることは好きです。小学生のときは読書部だったので(笑)。僕だけでなく、アスリートの中でも、陸上選手は考えることが好きな人が多いと思います。

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