研究で判明「睡眠が足りない人」が求める食事 食事と睡眠の切っても切れない関係がわかった
食事と睡眠の関係をよりよく理解するために、一部の研究者たちは無作為化比較試験を実施し、被験者たちに何を食べるかを指示して、そのあとでどう睡眠が変化するかを見るようになった。これまでの多くの研究で、温めた牛乳からフルーツジュースまで、さまざまな個別の食品の効果が検証されてきた。
しかし、これらの研究はたいてい規模が小さく、厳密なものではなかった。
食品業界出資による研究には疑問点も
こうした研究の中には食品業界がスポンサーとなって行われたものもあり、その場合には、結果にバイアスがかかっている可能性もある。例えば、世界最大のキウイ販売会社、ゼスプリインターナショナルが資金を提供したある研究では、被験者たちが4週間連続で、就寝の1時間前にキウイを毎晩2個食べるよう指示された。すると、その人たちは、入眠や睡眠の長さ、および効率の面で改善が見られたという。
この研究を実施した研究者らは、こうした結果が得られたのは、キウイに抗酸化物質が豊富に含まれていることが一因であるとした。しかし、この研究では対照群(キウイを食べていない人たちのグループ)が設置されておらず、偽薬効果によってどんな結果でも得られた可能性がある。
チェリー業界が出資した別の研究では、タルトチェリージュースを飲むと、不眠症の人の睡眠がある程度、改善されることが示された。これは、睡眠を制御するホルモンであるメラトニンを生成する、トリプトファンの作用が促進されるからだと考えられた。
トリプトファンは乳製品や七面鳥など、多くの食品に含まれているアミノ酸だ。感謝祭のごちそうを食べたあとに多くの人が眠気を感じる理由として、このトリプトファンの存在がよく挙げられる。
しかし、トリプトファンが何らかの効果をもたらすには、血液脳関門を越えなければならず、また、吸収されるには食品中に含まれるほかのアミノ酸と競争する必要もあるが、この競争には勝てない場合も多い。研究によると、牛乳や七面鳥など、タンパク質が豊富に含まれた食品を単独でとると、トリプトファンが血液脳関門を越える力が逆に弱くなるという。
トリプトファンの吸収を高める方法の1つは、トリプトファンを含む食品と糖質とを組み合わせることだ。この組み合わせがインスリンの分泌を促し、それによって競合するアミノ酸が筋肉に吸収され、その分、トリプトファンが血液脳関門を通過して脳に入りやすくなる。こう話すのは、コロンビア大学アービング・メディカル・センターの准教授で、栄養医学が専門のマリー・ピエール・スタンジだ。スタンジはコロンビア大学のスリープ・センター・オブ・エクセレンスのディレクターでもある。