もっとも、日本からの投資家にとっては、ドル円の為替レートが年間で約4.9%円高になっているので(2020年末は1ドル=103.2円)、この分の割引が必要だ。ドルは他の主要通貨に対しても弱く、ユーロはドルに対して約9%上昇したし、英ポンドも約3%上昇した。
ドル円の為替レートで言うと、日本も日銀が大規模な金融緩和を続けてきたし、これにコロナ対策の財政政策が加わって広義の通貨供給量が伸びる(11月末のM3は前年同月比7.5%の伸び)状況になったが、アメリカとその他の国が共に金融緩和を行うと為替市場ではアメリカの政策に対するドルの感応度が高い傾向があり、ドルの価値が下落した。
アメリカでもインフレ率は低下気味だが、それでも消費者物価の上昇率が1.2%(2020年11月)あり、2年国債の利回りが0.12%前後、10年国債は0.92%前後と実質金利がマイナスゾーンにある。
日本は「緩和負け」だが、投資の環境は悪くない
一方、日本は消費者物価の対前年比がマイナス0.4%(10月)と再びマイナスゾーンに落ち込み実質金利はプラスになっている。こうした状況背景に、現在は、ドル安円高になりやすい状態にある。つまり、日本はアメリカに対して「緩和負け」している。もっとも、日銀としては、低下したとはいえアメリカ国民のインフレ期待が健在であることを羨ましく思っているにちがいない。
さらに、金は年間で24.4%上昇し、2020年の最終取引価格は1トロイオンス=1895.10ドル前後だった。8月には一時2000ドルの大台に乗る場面があった。アメリカの金融緩和と財政政策でドルを中心に通貨の価値が落ち、市中に大量に出回ったマネーが、株式や通貨に対して代替的な性格を持つ金などに向かった。ビットコインの高騰も、これと同様の文脈で捉えることができる。
相場も政治と同じで「一寸先は闇」であり、何が起こるかわからない。だが、ここまでの状況の文脈からは定性的に以下の2つが考えられそうだ。(1)コロナが未解決なので今後も財政刺激を伴った金融緩和が継続すると期待できる、(2)コロナが解決する際の景気と業績の回復を株価に織り込む場面が今後ありそうだ、ということである。
加えて(3)アメリカでは経営者の「お手盛り的自己株買い」の進行(これはかなり「バブル的」な金融循環である)、(4)日本では周回遅れながらアメリカ的な企業統治にシフトする際の株価上昇余地があること、などを考えると、当面の株式投資の環境は悪くない。
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