なぜ日本人は「有馬記念」を賭けてしまうのか リスク嫌いでもギャンブル大好きの摩訶不思議

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2019年の有馬記念は大本命のアーモンドアイが9着に敗れる大波乱。勝ったリスグラシューの強さが際立った(写真:中原義史/アフロ)

いよいよ今年の日本競馬の総決算、有馬記念が行われる。この持ち回り連載は最後に競馬の話があるが、いきなりそのページに飛んでいるわけではない。「競馬ではない、競馬の話」である。

有馬記念というレースは、普段馬券を買わない人々でも買う。ボーナス後のクリスマス前後に行われる年末総決算のお祭りであり、ギャンブルと意識せずにギャンブルをさせるのに絶好のチャンスだ。これは、JRA(日本中央競馬会)が生み出した、世界最高のギャンブルビジネスモデルである。

日本人は「世界一のギャンブル好き」だ

この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら

実は、日本の競馬産業は圧倒的世界一で、それはJRAが圧倒的に世界一の馬券売り上げを生み出したからだ。

この結果、賞金だけなく馬の生産者、馬主や調教師、騎手の得られる収入も圧倒的に世界一。世界中の良血馬は日本に集まる。いまや世界の超一流の騎手たちは日本語の勉強をして、JRAの所属騎手になりたがっている。

この成功はJRAの産業戦略によるものが大きいが、背景には日本人が世界一のギャンブル好きであることがある。これは世間の常識に真っ向から反するが、動かしがたい事実だ。

馬券の売り上げは世界一、競馬への社会的許容度も世界一だ。さらに、宝くじの売り上げも世界一で、これだけ宝くじを普通の人々がみな買う社会はほかにはない。アメリカで宝くじを買うと言ったら、白い目で見られる。宝くじは期待値が低く、合理的でないからだ。

日本人は、リスクの高いギャンブルが大好きなのであるが、世間の常識では、日本人は世界一リスク回避的だと思われている。日本人はリスクが嫌い。リスクをとらないから日本企業はイノベーションを生み出せない。利益率が低い。経済が停滞している。大学生は大企業への就職を求め、異常な安定志向である。これらのイメージが世間には定着している。「リスクが嫌いだが、ギャンブル大好き」。いったいこのギャップはどこから来るのだろうか?

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