なぜ日本人は「有馬記念」を賭けてしまうのか リスク嫌いでもギャンブル大好きの摩訶不思議

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日本人が嫌いなのはベッティングである。自然が決めるべきことを、自分の力で変えようとすることも嫌いだし、将来のことを自分だけが予想して、それが運ではなく、予想の力で当てるということが嫌いなのである。それはサイコロと神に任せるべきであり、丁半賭博やチンチロリンが大好きなのである。

したがって、欧米、とくにアメリカで大流行の「スポーツ ベッティング」は、日本ではそれほど人気がないのである。アメリカのスポーツ ベッティングは分析力を競うゲーム、賭け事であり、運ではなく、ほとんどが分析力による戦いである。

日本で逆張り手法が好まれるワケ

実は株式投資においても同じことが言える。欧米では株式は投資であるが、日本語では株に投資する、ではなく株を「やる」のである。昔からコメ相場の人気があるのは天候によるものだからであり、経営の手腕を見抜くわけではなく、運の要素、しかも自然の支配によるものであったことが大きかったと私は捉えている。

日本の個人投資家は相場がボックス圏にあると考え、上がれば売り、下がれば買うという短期の逆張り手法を伝統的に好むが、背景には前出のことがあると思われる。FX(外国為替証拠金取引)が好きなのも、同様の背景であると思われる。

さらに言うと、行動経済学において有名なバイアスである自信過剰バイアスも、世界中で日本でだけ観察されないことは有名である(人々にアンケートを取り『自分の自動車の運転能力はどのくらいか』と尋ねると、日本以外ではほとんどの人が平均よりも少し上、と答えるが日本では過半数が、平均か平均よりも少し下と答える)。

これが、日本でだけ株式市場に中期のモメンタム(半年から1年の期間では、個別株式の株価は上がり続けるか下がり続けるという傾向がある)が観察されないことの背景にあると私は考えている。

さて、話を競馬に戻すと、ギャンブルとベッティングの違いなどを述べてきたが、難しいのは競馬の解釈であり、競馬はギャンブルなのかベッティングなのか、という問題である。

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