なぜ日本人は「有馬記念」を賭けてしまうのか リスク嫌いでもギャンブル大好きの摩訶不思議

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日本人がギャンブル好き、というのは、運だめしが好きだ、ということなのだ。つまり、タロット占いよりも星占いよりも、おみくじが好きなのである。

振り返ってみると、日本人は運に任せるということが極めて好きだ。戦争まで、神風頼みだ。そして、自然観もそうであり、自然が神であり、山や海が神である。

日本人独特の自然観や世界観がギャンブル好きの背景に

自然を支配してコントロールする、という欧米的な自然観ではなく、自然に支配されるなかで、どうやって自然と付き合っていくか、生き残っていくか、という発想である。

欧米よりはるかにサステイナブルであるどころか、太古の昔から、持続可能な社会を営んできたのである。狩猟が中心と思われた縄文人たちは、実は、農業を主とした弥生人よりも遥かに自然との共生を大切にしていた。そもそも日本的な感覚では、農耕というものこそ、自然環境を人間の力で変えてしまう自然を破壊する行為であり、縄文人たちは、自然に影響を与えぬよう、慎重に暮らしていたのである。

現代人の人生においても、企業経営においても、この精神は受け継がれており「人事を尽くして天命を待つ」ことが大好きで、天命に働きかけようとする欧米人とはまったく異なる世界観なのである。

私も、ビジネススクールで、経済社会をわが物顔に支配しているほとんどの有名企業の成功要因は、運であり、たまたまである、と教えている(誰も知らないが、これが私の有名な「たまたま理論」である)。

運に身を任せ、自然に身を任せ、柳のような武術を好む日本人、柔道では返し技こそが美しいのに、それでは指導になってしまいオリンピックに勝てないのだが、それでも美しい返し技一本の柔道を追究し続ける日本。この自然観、世界観こそが、日本人がギャンブル好きとなった背景なのである。

では、なぜリスクテイクが嫌いなのか。

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