そんな星野源さんの近年の代表作は3つあります。いずれも主演をした『逃げ恥』『MIU404』、そして映画『罪の声』です。
星野さんのこの3作品、共通点がいくつかあります。ひとつは、共演者とのディスコミュニケーションからスタートすること。
『逃げ恥』では、偽装結婚を申し込んだ新垣結衣さんと。『MIU404』では、望まずバディになってしまった綾野剛さんと。そして『罪の声』では、暴かれたくない過去を暴こうとする小栗旬さんとの関係性が物語のカギを握ります。
最初は心を通わせることができない相手と、少しずつ距離を縮めていく。その距離の詰めかたと、心が通いあった瞬間のカタルシスが、これら3作品の大きな魅力になっていたと感じた人は多いでしょう。
もうひとつの共通点でいうと、この3作品、星野さんの笑顔のシーンってほとんどないんですよね。どの役も、心の内側に人には見せることのできない領域を持っている(『罪の声』の場合は、持たされてしまっている)という役どころになっています。
笑わない役の中で、細やかな表情や仕草の変化で物語を引っ張っていきます。この演技力が、舞台時代からそうそうたる先輩方に囲まれて培われてきたものであることは、前述したとおりです。
松尾生まれ、細野育ち、野木ジャンプ
演技の父ともいえる松尾スズキさん、音楽でのソロ活動を勧めた細野晴臣さんと並んで、星野源さんの飛躍を語るときに外せないのが、脚本家の野木亜紀子さんの存在です。
そう、この3作品のもうひとつの共通点。『逃げ恥』『MIU404』、そして映画『罪の声』は、どれも、野木亜紀子さんの脚本なのです。
野木さんは、原作がある作品でも、オリジナルでも、時代の課題感を切り取る脚本に定評がある方です。
たとえば『逃げ恥』では、主婦の家事労働を「好きの搾取」と表現して多くの女性の共感を呼びました。同性愛や高齢童貞&処女を描いた作品としても、評価されています。
『MIU404』では、ジェンダー問題や違法ドラッグ、働き方改革からコロナ後のオリンピックまでを描き、「社会派」の名を不動のものにしました。
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