――欧米と日本の死亡率の差はどこにあるのでしょうか。
医療の側から見ると、日本は健康保険制度をはじめ医療の基本がしっかりしていると思う。日本では、基本的には誰でもどこでもいつでも保険証があれば、適正な水準の医療が、あまり高い費用でなく受けられる。欧米諸国の中には最先端の医療は進んでいるが、貧困層は医者にもかかれないというところがある。つまりすべての人に良質な医療の提供ができていない。救急医療外来はごった返し、長時間待ちも珍しい風景ではない国もある。移民、難民の問題もある。
――自然免疫、ファクターX説はどう思いますか。
自然免疫というのは、ある病気に対する免疫すなわち特異免疫の前に作動するので、その起点となるファクターXはあると思う。しかしそれが何であるかはまだ特定ができていない。
安全性を求めすぎると委縮してしまう
――日本では政府のGoToキャンペーンが批判され、野党が緊急事態宣言を主張しています。一方、もっと死者の多い欧米では政府がロックダウンなど制限をかけようとして、国民がそれに反対のデモを行っています。
それぞれの社会の違い、弱点が見えてきますね。日本では一部メディアが怖さを強調している。映像、声のトーンなど、ホラー映画のような扱いをしているところもある。センセーショナルな話としてではなく「正しく怖れる」という気持ちになっていただきたいと思う。
また、最近の社会は、何においても責任を求めるというよりも、追及する社会になっていて、それがいろいろなことのやりすぎを助長する面もあるのではないか。1人患者が出ると会社も学校も謝罪会見。学校ではゼロリスクが求められ、さまざまな対策をしても、何かあると多方面から批判される。皆が高い安全性を求めるあまり、一方では「のびのび」という状況が廃れてくる。これは今後の社会としては、見直さなければいけないと思う。
日本では皆が怖がりすぎてしまった面がある。たとえばまるで戸外の空気もウイルスだらけ、のように考えている人が少なからずいるように見受けられる。大気中に人に感染をするほどの濃度でウイルスがいるとは考えられないが、1人で公園を散歩している人もがっちりとマスクをつけている風景をよく見る。人と人の距離が一定程度保たれていて、しかも屋外であればマスクをする必要がない。公園など散歩するときはマスクを外してよい空気を吸ってくださいと、私はいろいろな場で申し上げている。また自分自身もそのようにしている。
情報発信で難しいのは、ある対策を多くの人に向かって呼びかけると、対策が不十分な人にはあまり届かず、すでに十分対策をしている人がさらに注意をして萎縮してしまったりすることだ。粘り強く説明をするしかないのだろう。
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