東京五輪、競技はできるが観客は感染状況次第 新型コロナ対策分科会の岡部信彦氏に聞く

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おかべ・のぶひこ/1971年東京慈恵会医科大学卒業。1978~80年米国テネシー州バンダービルト大学小児科感染症研究室研究員。1991年世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局(フィリピン・マニラ市)伝染性疾患予防対策課課長、95年慈恵医大小児科助教授(現在同客員教授)、1997年国立感染症研究所感染症情報センター・室長、2000年同センター長、2013年から川崎市健康安全研究所所長。政府委員も歴任し、2020年新型コロナウイルス感染症対策本部専門家会議構成員、新型インフルエンザ等対策有識者会議新型コロナウイルス感染症対策分科会委員、10月から内閣官房参与(感染症対策担当)

――感染症に対応している病院や医師・看護師が限られているのはわかりますが、欧米に比べて感染者も重症者も桁違いに少ない。医療資源の配分にも問題があるのでは。日本医師会は「医療崩壊の危機」としていますが、もっと一般のクリニックや診療所から応援が頼めないのでしょうか。

医師会というレベルでも協力は呼びかけてられている。しかし、感染症に慣れていない医療機関では感染対策に不安を感じているのも事実だ。

ことに最初の段階で、感染予防に必須のマスクがない、防護衣がない、ゴーグルもないということは医療機関にとってみれば「無防備」の印象となり、不安が高まったということは大きな躓きであったと思う。

またクリニックの医師が協力したいといっても、入居しているビルのオーナーがそのような疑いの患者がビル内にいるとなると風評に結びつくので診療をしないでほしいとか、コロナを見る医療機関に親が勤めているというだけで子どもが学校や幼稚園・保育所などで差別される、という話が残念ながら後を絶たず、看護師をやめたいという話もよく耳にする。

感染症の流行とは、悲しいことにそういう嫌な面もいっぱい出てくる。優しい気持ちで協力したいという人たちを一般の人たちが応援するような空気にしていただきたいと強く思う。

GoToの考え方は問題ない。使い方次第だ

――GoToキャンペーンで政府はたいへん批判を浴び、結局、一時停止に追い込まれました。しかし、寒くなった北半球では全般に感染が拡大しました。GoToによって本当に感染が広がったのでしょうか。

人が動けば動くほど、その距離が遠ければ遠いほど、ウイルスなどの病原体は広範囲に散らばり、感染症がひろがることは避けられない。これは現代社会においては宿命だが、そのレベルが問題となる。僕はGoToという方法は全体から見ればよい方策だと思っている。利用者も安い価格で楽しめるし、事業者もお客さんが来てくれることによって、何とか持ち直したり潤ったりする。

休業や損失を政府が補償するというやり方は、短期間ならよいが、長引くと事業を継続できないし、仕事の「腕が落ちる」ということもあるだろうし、働く楽しみもなくなってしまう。

ただ、人々は同じ時期に同じところへ同じ物を見に行くということになりがちで、もう少し分散できないものかと思っている。密にならないように使い方を工夫できればよいのにと思う。旅行に行くのはダメ、地方に住む両親に会いに行くのもダメ、とならないための上手な使い方の工夫とそこへの応援が今後は必要だと思う。

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